里山保全活動団体「遊林会」


森の植物Plants

愛知川河辺林の一部である「河辺いきものの森」は東近江市にとって数少ない平地林であるとともに、
標高125mの低地にもかかわらず、キクザキイチゲやシナノキなど温帯性の山地植物が生育しています。その特異性から、学問的にも注目される地帯となっています。

愛知川の洪水によって流されてきた山地の植物は、本来なら平地の気象条件に適応できず、すぐに消えてしまうのですが、愛知川の豊かな伏流水が湧水となって森のあちこちに小さな流れをつくり、ごくせまい範囲ながら温帯性の微気象ができていました。それに適応して山地性の植物が多数生き残っています。山地性の植物と合わせ、河辺いきものの森に自生する植物を一部ご紹介いたします。

尚、1998年から保全活動が始まった20年目(2019年)に大阪自然史博物館【友の会】理事長・梅原徹氏に植生調査を依頼しました。調査の結果、草本・木本合わせ474種類(外来種含む)の植物が自生していることが分かりました。1996年に行われた梅原氏の調査では290種類の植物が確認されていましたが、保全活動で森林整備が進み、林床が明るくなったことで、わずかしか見られなかった植物が復活したり、埋土種子が発芽しています。森林の環境が変わったことが、20年間で134種類も植生が増えた要因だと考えられています。

  • キクザキイチゲ
  • イチリンソウ
  • シュンラン
  • ウグイスカグラ
  • ウスノキ
  • カスミザクラ
  • ウワミズザクラ
  • モチツツジ
  • ガマズミ

保全活動により明るくなった林床には、3月末頃から山地性の植物でありスプリングエフェメラル(春の妖精)といわれるキクザキイチゲやイチリンソウが咲きはじめます。同時にシュンランやウグイスカグラ、ウスノキが咲きはじめ、4月初旬頃からヤマザクラ、カスミザクラ、ウワミズザクラ、イヌザクラの順で咲きはじめます。5月頃から咲きはじめるモチツツジや真っ赤なヤマツツジ、ガマズミなど里山の花をつぎつぎとお楽しみいただけます。

  • オカトラノオ
  • ウツギ
  • ヒメコウゾ
  • コアジサイ
  • ホタルブクロ
  • ウツボグサ
  • ネムノキ
  • ハイハマボッス
  • タコノアシ

初夏には山地性の植物であるオカトラノオが明るい草原に咲きはじめます。同じく山地性のイチヤクソウや、竹林にはオニノヤガラが咲きはじめます。また、里山でよく目にするウツギやヒメコウゾ、コアジサイやホタルブクロ、ウツボグサやネムノキなどもお楽しみいただけます。水辺では、保全活動によって土の攪乱があり、土中に埋もれていた種子(埋土種子)が目を覚まし発芽してきたものではないかと考えられているハイハマボッスやタコノアシをご覧いただけます。どちらも環境省のレッドリストに準絶滅危惧種として登録されている希少な植物です。

  • キハギ
  • ヤマジノホトトギス
  • リュウノウギク
  • ギンリョウソウモドキ
  • ツリガネニンジン
  • ツルニンジン
  • ヤブラン
  • ドングリ
  • 紅葉

初秋には山地性の植物であるキハギやヤマジノホトトギスが咲きはじめます。また、同じく山地性の野生菊であるリュウノウギクは保全活動で林床が明るくなったあと、一番に現れた植物の一つです。他には、腐生植物であるギンリョウソウモドキ、オトコエシやセンニンソウ、ツリガネニンジン、ツルニンジン、ヤブランなどをご覧いただけます。足元にはたくさん落ちた大きなドングリを、頭上には日に日に紅葉していくモミジたちの姿もお楽しみいただけます。

  • フユイチゴ
  • サネカズラ
  • コマユミ
  • ムラサキシキブ
  • ヒサカキ
  • シャシャンボ
  • キチジョウソウ
  • ジャノヒゲ
  • ヤブコウジ

冬の森では木の実、草の実がたくさんあり、野鳥たちが食べにやってきます。フユイチゴ、サネカズラ、ガマズミ、コマユミ、キチジョウソウ、ムラサキシキブ、ヒサカキ、ヤブラン、ジャノヒゲなど色とりどりの実は野鳥だけでなく、人々にも見つける楽しさ、愛でる楽しさを与えてくれます。また、落葉シーズンは樹形の美しさに目を向けてみたり、木の冬芽をじっくり観察してみることは冬ならではの楽しみ方です。