里山保全活動団体「遊林会」


先進地視察に行ってきました!

2023.03.21

3月19日(日)~3月20日(月)にかけて、遊林会の理事、森の作業班、事務局スタッフの合計16人で兵庫県と香川県へ先進地視察のため研修に行ってきました。
兵庫県にある環境学習施設「ひょうご体験学習館」の見学と香川県在住の農学博士であり森林インストラクターの横山昌太郎先生のエコツアーを学ぶことが視察の大きな目的です。
お天気にも恵まれ、朝8時に河辺いきものの森を出発しました。
11時すぎに「ひょうご体験学習館」に到着しました。
ひょうご環境体験館は、体験活動を通じて、地球温暖化をはじめとする環境問題について県民一人ひとりの意識の向上や県民による環境の保全と創造に関する活動を促進するための環境学習施設です。
館長の芦谷直登様が出迎えてくださり、普段行われている環境学習のプログラムのノウハウを熱く語ってくださいました。子どもたちに気づいてもらうため、世界で起こっていることを伝えたあとは、生活のためのエネルギーをどうやって作っているのか?そして、「あなたなら今後どうしますか?」と未来について自分で考える時間を作っているとおっしゃっていました。
とてもグローバルな学習だと思いましたが、子どもたちに分かりやすい解説、実践できる展示や工作などを行い、最後に一日を振り返ることで子どもたちが環境の大切さに気付くシステムを上手く組まれておられました。
私たちの環境学習のプログラムに活かせる学びと気づきがありましたので、新年度からの学校対応に早速活かしていきたいと思っています。

展示ルームの見学

こちらの施設には、体験学習のサポートや施設の解説をしてくださるボランティアさんがおられ、100名もの方が登録されておられるとのこと。この日、案内してくださった方はなんと滋賀県の草津市在住のお方でした。滋賀つながりでびっくり&嬉しい出会いでした!

ひょうご体験学習館を出発した後は、四国へ向かいました。
途中、休憩をとった山陽インターチェンジで近隣マップを眺めていたら、「たけべの森」と言う場所を発見。よく見ると、「たけべ」の漢字は「建部」ではありませんか。みんなで「わぁ!河辺と一緒や」と、ここに来ても滋賀との共通点がありびっくり&嬉しい発見でした!

1日目の最後は善通寺へ参拝に行きました。
真っ青な空がとても綺麗でした。

今年は弘法大師空海誕生1250年で、その弘法大師様がご生誕された時から繁茂していたといわれる楠の大木の下で記念撮影をしました。樹齢は千数百年経っているとのこと。この大木のように、遊林会が繁栄していきますように。ますますの発展を願い、みんなでお参りさせていただきました。

2日目もよいお天気。宿からは綺麗な朝日を見ることができました。

そして、今日は待ちに待った横山昌太郎先生のエコツアー研修。
普段は大川山(だいせんざん)という、香川県で2番目に高い山(1,043m)をフィールドになされているのですが、今回は人数が多いため「公渕森林公園」でエコツアーのガイドをしていただきました。横山先生のご挨拶の後、それぞれ自己紹介をしてフィールドに出発しました。

公園内に大きな溜池がありましたが、香川県の溜池は日本で一番の密度とのこと。バスで走っていると溜池をたくさん見かけましたが、納得しました。

まずは、今回のツアー内容の紹介がありました。
地球ができてから38億年。いきものが海から陸地に上がってきてから5億年。公園を歩きながら、その歴史をたどりますねと説明があり、イラストの書かれた用紙をいただきました。6枚のイラストに進化の順番をつけるクイズでした。みなさん「まずは、苔やろ…」と言いながら、番号をつけていきました。

あしもとにはオオイヌノフグリが咲いていました。オオイヌノフグリは明治時代から30年で日本を制覇した植物だそうで、どうしてそうなったのかと言うと、花を開いたり、閉じたりを繰り返すことで、自家受粉しやすくしているからとのこと。どこででも見られる植物ですが、身を守り繁茂していくためにきちんとした生存戦略があることを知り、みんなで「へぇ~」と感心していました。と同時に、「面白い!次はなんだろう」とみんながわくわくしていることもよく分かりました。

少し森に入ったところで、ヤマガラやシジュウカラの鳴き声が聞こえてきました。みんなで上を見上げて耳を澄ましていると、「鳥を捕まえました!」と横山先生の声が。「え!」とみんなで驚いて、先生が開く手を見ると…生きた鳥でなく、なんと、ぬいぐるみの鳥が出てきました。まさか、ぬいぐるみが出てくるとは思わなくてみんなで大爆笑。大きさも重さもほぼ実寸とのこと。捕まえることができない分、ぬいぐるみで本物を知ることができるのはリアルな体験で面白いなと思いました。
また、インタープリターには「TORE」が大切とのことを教わりました。Tはテーマ、Oはオーガナイズ(構成)、Rは自分と関係あること、Eはエンジョイブル(楽しめる)。特に、現代ではエンターテイメントの必要性も求められていると教えていただきました。楽しく、愉快に伝えることで相手も自分も楽しくなる+学びがある、とても素敵な方法だと思いました。

同じ鳥つながりで、ヤブツバキの蜜を吸うメジロについても教えていただきました。ヤブツバキの蜜は甘くて美味しいのですが、その蜜を吸うメジロの舌は蜜をペロペロ舐めることができるように、筆状になっているとのことで、いきものたちの生きる工夫を知りました。

ここでは、苔のお話をしていただきました。5億年前の海から陸上に上がった最初の植物は「苔」。いつも緑色でジメジメしているところに生息しているように思える苔ですが、岩にくっつきながら生きていた苔は、乾燥にも強くなくてはいけません。なので、お天気のよい日の苔はカサカサで茶色です。ところが、雨が降れば水を一瞬でふくみ、一気に緑色に変わります。そうやって苔は生きてきたのですが、それを、霧吹きの雨を降らし、再現してくださった時は茶色の苔が一気に緑色に変わり「わぁ!」とまたまた驚きの声でいっぱいでした。

種類までは分かりませんでしたが、桜が綺麗に咲いていて、お花見をしながら歩きました。

先生のガイドも終盤になってきて、植物の進化のクイズのまとめをしてくださいました。
進化の順番は、
①苔:苔が生え、土ができた、受精に水が必要
②シダ植物:根と茎に分かれた、空中を開拓
③針葉樹:裸子植物、風で花粉を運ぶ
④広葉樹:果実ができた、誰かに運んでもらえる、毒物(アルカロイド)を作り食べ過ぎられないようにした
⑤タンポポやスミレなどの草:いろんな種をつくれば、いろんな環境、場所ですめる
⑥イネ科:シンプルに風で増える。飛ばせればいいという形
でした。
答え合わせの後、イネ科が進化の頂点ではなく、植物は多様に生きていくために姿を変えていったのだというお話をしてくださいました。
また、そうやって植物が開拓していくことで森になっていきました。森はいろんないきものがいるので、そのお陰で豊かで循環している世界ができている。このことは、実は人も同じで、多様な人がいるからこそ、豊かな社会になるのではないでしょうか?森がそれを教えてくれてるのではないでしょうか。と教えてくださいました。

最後は芝生広場でお茶タイム。
横山先生が、地元の柿の葉茶とお菓子をご用意してくださいました。お菓子は「おいり」と呼ばれ、花嫁さんがお嫁入りにもっていかれるお菓子だそうです。あられですが、口の中でふわっととける初めての食感。甘くて美味しかったです。優しいお心遣い、本当にありがとうございました。ご馳走さまでした。

地球ができてから38億年。いきものが海から陸地に上がってきてから5億年というと、果てしない年月で想像もしにくいですが、あしもとに生えている植物たちを眺めながら、また手に取りながら、お話を聞くことで、とても身近に植物の進化を感じることができました。難しいことをこんなに楽しく、面白く知ることができたら、学ぶことはもっと楽しくなり、もっと知りたいと思うだろうなと思いました。私たちが目指すべきガイドの方法を体験をもってしっかり学ぶことができました。TOREに基づいたガイドの進め方や誰もが気持ちよく参加できる雰囲気づくりなど、たくさんの学びと気付きをくださった横山先生には感謝でいっぱいです。お忙しい中、お時間をつくっていただき、本当にありがとうございました。この場をお借りし、お礼申し上げます。

帰りのバスの中では、今回学んだことや今後の遊林会に活かせることなどを全員の方から感想をいただき、研修の振り返りをしました。
•横山先生のガイドが素晴らしかった。最高だった!
•お金をもらうガイドとはこういうことかと思った。
•苔の実験が面白かった。河辺の森でもできそうだね。
•木の見方が色々あって、いろんなことに気がつけた。
•横山先生のお客様が楽しいと思える丁寧で細やかなおもてなしを見習いたい
•難しいことをとても分かりやすく解説してくださって、楽しく学べた。
などの感想を共有しました。この研修で得た知識やノウハウを今後のツアーやガイドに活かしていきたいと思います!
ここでは、書ききれないほどたくさんの感想がありましたが、一番多かったのは「どこに行っても楽しい研修だった」の感想でした。
遊林会はこれまで「楽しくなければ続かない!」をモットーにして活動してきました。どこででも、どんな時も、みんなと活動すれば楽しい。それがあれば、どんなことも乗り越え、成長していけるのではないかと改めて思いました。
そんな反省会を事務局スタッフで最後に行い、「これからもがんばるぞー!」と円陣を組んで終わった先進地視察でした。
これからも自然を守り、自然の楽しさや魅力を伝えていく団体として生長していきますので、遊林会活動の応援をよろしくお願いいたします!  くまき

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