'06年4号 No.95

☆作業日あれこれ

 最初は天気予報では雨が予想されていたのですが、日が近づくにつれて晴れ予想に変わり、ラッキーという感じでした。この日の観察会は、いつもと趣向を変え、焼鳥名人によるアイガモの捌き方です。一同、名人の見事な腕前を見学しました。これについては詳細を後段で紹介することにして、作業メニューに飛びます。
 青年部長はやる気満々でいつもの竹林整備です。花粉症のためにこの時期、軽トラ野郎は毎年お休みですので、伐ったタケの運搬はリヤカーを使って静かに行われておりました。
 マルは観察路沿いの枯損木の伐り倒しです。これは、観察路を歩く利用者に枝が落ちたり幹が倒れかかったりして被害が及ばないようにする作業です。しかし、枯損木を総て処分するとこの森のマスコットであるコゲラの巣やクワガタの居場所がなくなりますので、こうした心配の少ないエリアの木はそのままに残しています。枯損木の多くは伐り倒すと地面に倒れた瞬間に分解する感じです。それを適当な大きさに玉切りして焚き火用にストックしますが、こうした時に木の中からは越冬中のいろんな虫が見つかります。この日も大スズメバチの女王蜂(越冬するのは女王蜂だけ)が見つかり、ちょっとした興奮状態になった御仁もおりました。
 毎年この時期にするシイタケの菌打ちは、大先生がリーダーです。この作業は女性の参加も多く、電動ドリルでの穴開けや太いほだ木の移動はヘムスロイド村突撃隊長の仕事、開いた穴に菌を積めて木槌で打ち込む仕事は女性の受け持ちです。菌打ちをしたほだ木にシイタケが発生するのは、1年半後の来年の秋です。今年は萌芽更新を図るために、ほだ木になる木をいつもより沢山伐ったこともあり、この日の作業だけでは処理することができず、ほだ木が残ってしまいました。後日、炭焼をしながらこつこつと木酢液の蒸留、ほだ木の菌打ちをされる炭焼名人の姿がありました。 

▲在りし日?、窓際席でパンを食うクマ

  この日の作業で一番話題が多かったのは、本来の森の作業ではなく、作業をする人に昼食を提供する昼食班です。アイガモの肉を使った料理がメインでしたが、このアイガモを捌くのが大変だったのです。市内の糠塚町でアイガモ農法で米作りをされているのですが、役目を終えたアイガモ達の利用がされていないことを知った御仁が、捌いた半分をお返しすることで地元と話を付けてきました。そこまでは良かったのですが、まず水田に放されているアイガモを捕まえることから作業開始です。斥候に出たうしまろは40羽余りのアイガモが2反程の水面を自由に泳いでいるのを見て、この捕獲作戦は大変ですと大先生に報告しました。スタッフを総動員、長靴やウェーダーに身を固め出陣。現場を見たスタッフはその広さに唖然としたようですが、畦で指揮する大先生の命令で長い網を使って追いつめ、あっさりとアイガモ捕獲作戦は終了。さすが学校で軍事教練を受けた世代は違うなと、若者達から妙な感心をされていました。捕獲は水曜日、捌くのは金曜日ですので、二晩ばかり森で飼わねばなりません。この間、ゲージに入ったアイガモ達に目を合わせて情が移ってはと目をそらせていたスタッフもいました。アイガモはニワトリと異なり、仕草も可愛く目も優しく感じてしまうのです。

 そうして金曜日です。焼鳥名人の指導で捌くのですが、入門希望者はスタッフ以外にも三平モドキの先輩、菜の花館の関係者、そして大先生、ビデオ小父さん、ヘビ掴み名人、今回の口利き人(かつてそれが仕事だったような)等、総勢10名程です。愛子様は、遅刻をすれば逃れられるかと用事を済ませてご出勤遊ばされましたが、何の何の数が多くちゃんと仕事が残っていました。焼鳥名人の指導に従って作業を進めると、アイガモ達は鳴き声を上げることも苦しむこともなく成仏してくれます。その後は羽をむしり、関節の部分に包丁をあて解体します。名人の実演を見ているとなるほどと思うのですがやってみると同じようにはいかず、ヘビ掴み名人によるところのためらい傷が付くことになってしまいます。それでも1日かかって30羽を捌きました。しかし、ゲージの中にはガーガー言っているのが10羽残っており、作業日の仕事として持ち越しになりました。 かくしてお昼の材料となったアイガモですが、まず丸ごとお腹の中に詰め物をしてピザ窯でローストです。観察会の時に「わしはこれはあかん。今日は昼飯は食えん!」とおっしゃっておりましたヘムスロイド村突撃隊長殿は、「食べてやることが供養と焼鳥名人に言われたので・・・・。」と言い訳をしながら骨までしゃぶっておられましたので味は想像できます。後はガラを出汁にしたスープと鴨鍋風野菜煮込汁です。一同、命を頂くことによって生かされている己を感じながらのお昼となりました。ごちそうさまでした。もちろんこの日もちゃんと午後も作業に励みました。

▲ 焼き鳥名人の指導で

   いきものの森は第4水曜日が春分の日の振替休日になるため、翌日の23日が作業日となりましたが、そのためでしょうか、いつもより少なめの参加者になりました。朝方の雨から天候がどんどん回復に向かっていましたので、落ち着くまで春の森を感じようと、水曜日には珍しく観察会からスタート。咲き始めたキクザキイチゲ、シュンラン、タチツボスミレの花々、緑の絨毯のようになる芽を出し始めたヤブカンゾウの新芽、最後には水辺でカワセミのつがいに出合うおまけ付きです。

 作業はナラ枯れ対策(萌芽更新による樹勢の回復)を兼ねた高木の伐採と焼成済の竹炭の取り出しです。伐採作業では、くれぐれも安全にと言っていたのですが、特攻隊長によれば「木を伐ると届かんと思とっても(見た目より高くて)近くまで倒れてくるんでびっくりやー。」とのこと。マルの仕切りですので大丈夫でしょうが、桑原くわばらというところです。(さすが特攻隊長というニックネームだけのことはあるなぁと変な所で感心です。)翌日には、伐った木は山番さん夫婦の手できっちりと薪になっていました。炭の取り出しは、このところ、焼き方の改良を重ねておられる炭焼名人ですが、ゆっくりと時間を掛けて窯の中で乾燥を図って焼いた竹炭は80点の出来とのこと。常連には好評な週日活動のこの日のお昼は季節感を織り込んだぬた、フキノトウやツクシの天ぷら、ミズナの煮浸し、おからに鶏の唐揚げと豪華版です。しかし、花粉症の軽トラ野郎やキノコ博士、家出中の焼鳥名人などが不在で、般若湯の消費はそれほどではありませんでした。もちろん午後も時間になれば作業開始です。  


 4月26日(木) 週日活動 森の居酒屋は4月5日 午後7時頃〜
4月8日(土) 午前9時(遅刻可)より 作業開始
主 催 者 : 遊 林 会

連絡先:八日市市 花と緑の推進室 Tel 0748-20-5211 Fax 0748-20-5210 当日連絡先:携帯(丸橋)090-3352-3163
Eメールでも、ご意見をお待ちしています。E-mail:ikimono@po.bcap.co.jp


☆河辺いきものの森スタッフルーム情報

   役所恒例の人事異動が発令されました。動くはずがないと高をくくっていたクマがその対象になり、行政職員としては森を去ることになりました。この森で退職することを希望していましたが、宮仕えの身としてこの日のあることは予想しており、そのために遊林会の代表者としても関わっていましたので、これからは遊林会の側からのみ参加することになります。視察や講演等については可能な限り今まで同様に関わるつもりですが、河辺林通信、ホームページの伝言板コーナー、その他についてもこれからどのように維持して行くかを考えると頭が痛いことです。皆様、どうか今まで以上に遊林会活動についてご支援をお願いいたします。               

☆里山七彩

 3月4日は加藤真京都大学大学院教授の「草はらという原風景」でした。受講者の心に残ったのはオオカミという天敵がいないこととハンターの減少、シカ肉の需要が少ないためにシカが増えて、林床の植生を食い荒らし、果ては樹皮まで齧るために土砂流失が発生する程荒れてしまった芹生の京大演習林の現状でした。以前より、森林の現状を憂う一部の人間の間では、天敵で絶滅したニホンオオカミに代えてユーラシアオオカミを放そうという話や、ナチュラリストならライフル免許を取得してシカを撃てという話がありましたが、極めて現実的な対応だと感じ入る位に、同一場所で写された過去と現在を比較した証拠写真には、豊かだった林床の植生がシカに食べられてむき出しになった地肌が写されており説得力がありました。ハンターの高齢化、シカ肉の利用増進等の対策を講じなければ、山里からシカを山に追い返すだけでは、根本的な解決策にはならないことを知らされもしました。また、草原の希少種の多くはかつて草原に軍馬育成目的で放牧されていたウマが毒があるために食べ残したオキナグサやセンブリなどの植物が、放牧が無くなりウマに食べられていた植物に負けて希少種になっているという話も興味深いものでした。

 今年は「里山三彩」だと皮肉る声も聞こえていますが、最後は県立大学野間講師の「里山と獣たち」で締めくくりです。今回は獣の中でもイノシシに絞ったお話です。獣害にさらされている田畑と接する荒廃した竹林や植林地、雑木林に伐採や間伐の手を入れ、見通しの利く緩衝地帯を設けると、イノシシは田畑に出現しなくなるとのことです。しかし、その後放置すると草や再び地下茎から発生したタケに覆われて藪になり、再びイノシシが出現するので、継続した管理が必要です。イノシシ除けの柵の設置は大がかりで大変ですが、こうした所に簡単な柵を作り羊を飼うとイノシシも出没しないし草も徹底的に食べてしまい管理も楽になるとのことです。この実験の結果に刺激されて、ネザサに覆われた境界部分に手を入れてウシを飼う試みも実験地の近くで取り組むことになったとのこと。かつて集落近くの里山は、刈り敷きや飼料、燃料として絶えず収奪の対象になり、見通しの利く草原や疎林であり、獣たちは人を恐れて出没しなかったけれど、利用されることなく荒廃し田畑への獣害の発生原因のひとつとなっています。我々は里山の荒廃が植物の多様性を失っていることばかりに目が行っていますが、獣たちとの付き合い方にも注意すべき必要があります。  (この項、文責武藤)  

☆4月の作業のお昼

 4月は、タラノメ、ヨモギなどの山野草の天ぷら、ヤブカンゾウのぬたが定番料理です。春を楽しめる献立に乞うご期待。    容器やコップは数に限りがあります。食器の持参をお願いします!

発行者:東近江市建部北町 河辺いきものの森ネイチャーセンター内 遊林会 世話役 武藤精蔵 Tel 0748-20-5211
遊林会URLは http://www.bcap.co.jp/ikimono/yurin/ or ”遊林会”で検索  あなたの思いを掲示板へ


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