'03年2号 No.57

☆作業日あれこれ

今日はごちそう

 天候が心配されていた新年初めての作業日は快晴でした。まずはいつもの観察会から。今回はM女史を水先案内人に、ハリヨ池のハイハマボッスから始まり、八ツ橋のヒメガマまで、水辺をじっくりと観察して回りました。途中でコゲラの新年の挨拶もありました。活動メニューは冬の恒例作業、木の伐採、落ち葉掻き、木道沿いの丸太運び、竹炭出し、スギ炭の袋詰め、昼飯づくりでした。
 木の伐採は野鳥観察壁の奥でアラカシを伐って薪にする作業でしたが、別働隊は木登り名人と山田親方という最強コンビでモミジを日陰にしているナラ類を伐りました。今回も芸術的な職人技で、サクラにもモミジにもダメージを与えずの伐採でした。落ち葉掻きは、交流広場(昔の集合場所)で、重点的に行いました。掻いた落ち葉は前回の作業日で修復した竹柵の中に集められ...これはカブトムシの幼虫のねぐらになります。また落ち葉掻きには、日当たりの良い地面を好む植物に、発芽・開花の場を与えてやるという目的もあります。去年はシュンランが少なかったなぁ、という声もあったので、今年はたくさん出ることを期待しています。ちょいちょい引き取られていたスギ炭は、新たに袋詰めし、センター内にストックを作りました。火付きの良い杉炭が欲しい方は、スタッフにお問い合わせ下さい。ただ、自然とよりよい関係を築くことを推進している立場としては、バーベキューだけの利用では寂しい気がしますので、それ以外の利用方法も考えていきたいところです。木道沿いの丸太運びは一番の力仕事。高校生の若い力も振るわれ、木道沿いはかなり見晴らしが良くなりました。しかし、この森にはまだまだたくさんの放置木が横たわっていますので、これからもこの力作業は続きます。昼ご飯のメニューは炊き込みご飯、野菜たっぷり豚汁、天ぷらでした。ところでこの日の料理班、いつもお米を炊いてくれるベテランが不在でした。「初めちょろちょろ…」と歌がありますが、火加減はやはり経験がものをいいます。50余人の胃袋を預かる身としては、危ない橋を渡るわけにはいきません。結局、炊飯器3台をめいっぱい使って、ご飯を炊いたのでした。作業終了後には、持ち寄って頂いたおもちを使ったぜんざいをいただきました。
 第4水曜の活動日は、インド帰りのスタッフ井上の土産、インド風ミルクティー「チャイ」を作業前に味わっていただきました。「インド人はこんな甘いものを飲んでいるの?!」という意見が多い中、「これはこれで癖になりそうな味やな」と言う声も聞こえました。
 作業は、まず、県が持ってきた竹(後述)を窯に詰め、火を入れました。次に、2年前に作った萌芽更新区域の隣で木を伐り、萌芽更新の区域を広げました。萌芽更新というのは、一定面積にある木をすべて刈り、切り株から出てきた新芽を利用して、次の世代を育てる方法です。2年前に伐った切り株からは、何本もの芽が伸び、高いものは既に4mを超えています。今回切り出した材は太さごとに、ストーブ用、きのこのほだ木用、と切る長さを変え、細かい枝は柴として丁寧に集めました。
 チェーンソーの音もけたたましいこの作業の中、我々をジッと見つめる小さな目がありました。それは…1羽のモズでした。小さな猛禽と呼ばれ、くちばしが鋭く、小鳥も狩りの対象にしてしまうヤツです。人の目線より少し高いくらいの枝にとまりながら、木が切り倒されるのをじっと見ていて、虫を見つけると(人の目には全く見えません)サッと地面に降り、ついばんでまた枝に戻る姿には感心します。

☆炭窯のこれまで

振り返ってみると、この森で初めて炭焼をしたのが、遊林会結成4ヶ月後の1998年10月10日でした。昨年の3月のネイチャーセンターオープンと共に遊林会特製の本格炭窯に火が入りました。この炭窯ができてから作業効率はぐんと上がり、今となっては前にドラム缶を使って炭を焼いていたのがなつかしく思われます。新しい炭窯になってから、この森の竹以外にも、林田町の緑地公園のボランティア活動で伐り出されたモウソウチクを、向こうのメンバーと一緒に焼きました。先の活動日には、県からの委託として公共事業で出た竹を焼きました。できた炭は水質浄化に利用するのだそうです。何もしなければ産業廃棄物として処理される竹が、遊林会の炭窯により、有効に利用されるというのはうれしいものです。

2月26日(水)週日活動 森の居酒屋は2月5日午後7時頃〜
2月8日(土)午前9時(遅刻可)より 作業開始
主 催 者 : 遊 林 会

連絡先:八日市市 花と緑の推進室 Tel 0748-20-5211 Fax 0748-20-5210 当日連絡先:携帯(丸橋)090-3352-3163
Eメールでも、ご意見をお待ちしています。E-mail:ikimono@po.bcap.co.jp

☆河辺いきものの森情報

 スタッフ泉はこの森の冬は初めてなので、雪が降るたびに見られるいきものの足跡を追跡するのが楽しみ。雪の降った朝の仕事は足跡の探索から始まります。道という道はもちろん、センターの周りも足跡がいっぱいで、動物たちが森中を我が物顔(当然?)で闊歩している姿が浮かびます。そのなかでも一番多く目立つのがキツネの足跡。ゆっくり歩いているときはほぼ一直線に、前足の跡を後ろ足で踏み、足音を消して歩くという几帳面なヤツです。その足跡を追っていくと、ドングリ広場の手前で飛び散った羽根と血痕を見つけました。雪の上は目立ちやすく、臨場感が抜群で、犯人の足跡を追跡する気分は新米刑事。どうやら獲物を藪のほうに持っていってからゆっくりと食事をしたらしいことがわかりました。
 あと、足跡で目立つものではウサギがいます。ケンケン、パ、というわかりやすい足跡なのですが、最初は進んでいる方向がわからず、寒いから片足ずつで歩いているのかな?と思っていました。2回目に雪が降った時にウサギの足跡が無く、心配していたのですが、つい先日、昼過ぎに林冠トレイル下で眠っていた本物を見つけ、驚き、感激。人に驚いて逃げていきましたが、ノウサギはこの地域では冬でも茶色で、しかも夜行性なので、見つけたのは幸運だったのかも。
 彼(彼女)らがどこから来るのかと思い、進入経路をみていると、水辺の終わり付近、堤防沿いの道が多いようで、やはり森の外から足しげく食料調達のために通勤しているようです。ウサギの生息域は10〜100 haともいわれており、この森で生活するのは窮屈なのでしょうか。ひと家族が養えるくらいの食糧はあると思うのですが…。野生生物の姿は見つけられなくても、彼らの足跡は森が人間のものだけではないということを実感させてくれます。雪の降った朝には防寒対策をして是非森に来てください。
 年々にぎやかになっていく森の鳥たちですが、今冬はヒヨドリが元気です。センター前の鉢植えの葉ぼたんを食後のデザート!?にしているらしく、辺りにはヒヨドリの糞がいっぱいです。仕事熱心なM女史の調べによると、糞の中には、クロガネモチ、ネズミモチ、センダンなど8種類の種が入っていました。植物の中には、おいしい果実をダシに鳥をおびき寄せ、果実と引き替えに種を遠くまで運んでもらうものがいます。この森でも鳥が運んできた種からいろいろと生えてきています。つい最近、ヤドリギが見つかりました。ヤドリギは鳥に運ばれ、糞になっても粘る果肉で枝にひっつき、他の樹木に寄生する植物です。ヤドリギが見つかったという話を聞いたFさんは飛び上がって喜んだそうです。

☆森の連続講座

賑わう里山七彩

里山七彩第6回は「生物多様性と市民活動」という題で、東京大学の鷲谷いづみ先生に話をしていただきました。昔は自然に対する規範や信仰によって人間活動と自然との間には秩序が保たれていたが、それらが失われ歯止めがきかなくなった今、その代わりをするのは生物多様性という概念である、というくだりが印象的でした。里山保全活動というのは、文字通り、里山を管理し保全していく活動です。ただ、その目的は懐古主義的な昔懐かしい里山の原風景を取り戻すことにあるだけではなく、そこに住む動植物の生物多様性を維持するためでもあるということが今回のお話しで再認識できました。これは参加者から寄せられた感想でもあります。それに加え、遊林会では「人と自然、人と人とををつなげる森づくり」も大事にしていきたいと思います。
また、主に教師を対象とした第6回目の森の環境学習講座では、蒲生野考現倶楽部の井阪尚司先生をお呼びして「たんけん・はっけん・ほっとけん」をテーマに話をしていただきました。今回は話を聞くだけでなく、ワークショップ形式で森のスタッフをはじめ小学校の先生、学生の皆さんと意見交換をしました。また、身近な課題を設定し、それをどういうふうにとらえ、考えていくかということをフローチャートで整理していくという実践的な方法についても学ぶことができました。
 里山七彩も次回がいよいよ最終回です。
3月14日(金)の17:30から東京大学の井上真先生に「アジアの森と人」というテーマで話をしていただきます。

☆武藤さん情報

 回復は順調で、まもなく退院とのことです。春はまだですが、退院後はたまに森に出没するのでしょうか…。

☆2月の作業日は

なんと!昨年作ったさつまいもは、霜にも負けずセンターに無事保管されています。これを使って久しぶりに焼き芋でもと考えています。寒い日が続きますが、森でひと汗流しましょう。
汁物を入れる容器やコップは数に限りがあります。食器の持参をお願いします!
12月の活動日に撮った集合写真ができました。焼き増し希望の方はスタッフまで。


☆今月号は…

今月号はスタッフ泉と佐竹が筆をとりました。2号続けて書いたことで少しは慣れた気がします。来月号もがんばります。

発行者:八日市市建部北町 河辺いきものの森ネイチャーセンター内 遊林会 世話役 武藤精蔵 Tel 0748-20-5211
遊林会URLは http://www.bcap.co.jp/ikimono/yurin/index.html あなたの思いを掲示板へ


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