'01年10号 No.41

★作業日あれこれ

試験通水を始めた水路と八日市市南小3年生

 8月22日の活動日は水不足に悩む日本列島をゆっくりと北上していった台風の影響が残る日でした。朝の内滋賀県にはまだ警報が発令されていましたが、来るべき人は来る、そんな感じです。家人に、「警報が出てるのに行くの?」と言われても出てきた人、諦められている人、誰にも干渉されない人達です。(失礼) 台風後の森のパトロールと初秋の森の観察から始めたのですが、資材小屋の所で強い雨足に捕らわれて雨宿りです。これじゃ作業にはならんと小雨状態になるのを待って作業小屋に引き返し、作戦変更です。こんな時、こうした屋根のある施設の存在はありがたいものです。雨足が遠のくまで砥石を使って刃物の手入れ、その間に図書館から24日に番外里山七彩の講義をお願いしている杉山銀治氏監修の炭焼きのビデオを借りてきて全員で炭焼き学習となりました。午後は、ケヤキの森でクズ退治&高校野球の決勝戦(近江高校)の観戦で燃えてしまいましたとさ・・・・。参加者7人。
 9月8日の定例作業日は作業日和とは言い難い蒸し暑さでしたが、心配していた前日までの雨も止んで仕込んだ昼食のおでんも無駄にせずにすみました。(余談:余ったおでんは、その後一週間、遊林会スタッフの井上君の昼食でした。) ソメヤンハサケガスキー氏は冬瓜の煮込みと煮込みご飯、天ぷらと助手を従えていつも通りの頑張りでした。この日のメイン作業は森の南西の一角、タケとの大格闘を終えたケヤキの森で隣の砂利採跡地(埋戻表土に放棄水田土壌が使用された可能性大:現水辺のビオトープ整備地)から進入したセイタカアワダチソウの除草です。いずれ自身が他の植物の進入を押さえる毒素により自滅するのですが、このままではケヤキなどの実生苗が被圧されて育ちません。機械刈り、鎌刈り、手抜き(手抜き工事という意味に取られるようで面白くないのですが、誤解のないように。)の3班に分かれて2haの面積に展開しました。敵はセイタカアワダチソウ、ブタクサ、クズといった面々であり、クズを除けば帰化植物であり日本の動植物を守るためにと国粋主義的な作業だなと苦笑いです。この跡にカワラナデシコでも発生するようになれば良くできた話なのですが。残念ながらこの日の作業ではすべてを刈り取ることはできず、ただいまのところどのように後始末をしようかと悩んでいます。他にはアラカシの伐採と薪づくりやセンター横の枯れて危険なクヌギをいつもながらの華麗な技で切り倒したWさんの姿もありました。
 この日は八日市市の作成する新エネルギー・ビジョン策定委員や地方自治研究センター、愛東町職員、彦根から色々あって参加した人などを加えて賑やかな作業となりました。前夜、里山七彩を受け持たれた倉本先生も午前中参加され、たっぷりと汗を流された後、大阪自然史博物館へと向かわれました。市長も午前中、顔を出していたのですが昼食までは時間がなくて参加者に挨拶をできなかったことを寂しがっていました。
 9月からは午後も作業するはずだったのですが、あまりの暑さで○○○がおいしかったのと賑やかな参加者のためにお昼の食事が盛り上がってしまい、午後の作業は開店休業状態となってしまいました。涼しくなったら頑張りましょう!

★タケの強敵現る?

例年より早く本数も多く
発生したアキノギンリョウソウ

 8月30、31日に大津で地域づくり団体全国研修交流会というものがあり、遊林会もその中の分科会にパネリストとして参加しました。2日目は現地分科会で河辺の森の見学です。参加者の中に熊本県八代郡にある立神峡里地公園の関係者が見えたのですが、見学後、お互いに共通の問題に関わる者同士としてごく自然に里山の管理について意見交換をしていました。その中で話題は当然タケとの闘いになったのですが、耳を疑う情報が出てきたのです。九州では私たちの想像できない冬にも日当たりのよい竹林ではモウソウチクのタケノコが発生し市場への出荷や最盛期には缶詰加工も盛んでした。こうしたタケノコを生産していた地域で輸入や食生活の変化による生産や管理の放棄された竹林問題は一層深刻のようです。ご多分に漏れず里地公園でもタケによる森林浸食に悩んでいると、地域の古老からタケを絶やすためにはソバを植えると効果があるとの情報が寄せられ、試しにとソバを刈り取ることは考えずにタケを伐採した跡に蒔いたのだそうです。結果は、理由は分からないが翌年その場書にはタケノコは発生しなかった!? あまりの結果に何回も念を押したのですが、関係者お二人は事実だとおっしゃるばかりです。あれほど悩んでいるタケがたった一度ソバを蒔くだけで地下茎の活動を停止するなんて未だ私は素直に結果を信じられないのですが・・・・。誠にお二人には失礼なのですが、半信半疑ながらも是非ともこの森でも試みようと考えています。その後、篤農家の息子・K氏にも訊くと、「タケの話は初めてやけどソバを植えると雑草が生えんようには思います。」とのことでした。来年、ケヤキの森でソバを播いて事の成否(疑って申し訳ありません、熊本のお二人殿)をこの目で確かめましょう。期待通りの結果が出れば、日本の里山問題に取ってソバは収穫できずとも極めて大きな収穫です。そうあって欲しい!

10月23日(火)週日活動 今回に限り火曜日に変更 森の居酒屋は10月10日
10月13日(土)午前9時(遅刻可)より 作業開始
主 催 者 : 遊 林 会

連絡先:八日市市 花と緑の推進室 Tel 0748-24-5658 Fax 0748-24-0752 当日連絡先:携帯(武藤)090-3729-2344
Eメールでも、ご意見をお待ちしています。E-mail:seizo-mu@mx.biwa.ne.jp

★弦楽四重奏コンサートの詳細決まる

 この森の保全活動にも幾度か参加、特に水曜日には彼女が来るかどうかで参加者の秘かな心の張り合いにもなっている大阪センチェリー交響楽団の清水さん他のメンバーによる弦楽四重奏コンサートの詳細が決定しました。チケットの販売(演奏者と聴取者に気持ちよくコンサートを楽しんでいただくために有償としました。)方法や内容については別紙をご覧下さい。申込みをお待ちしています。なお、遊林会メンバーには電話での申込み(センターにて)や販売期間の延長など便宜を図っていますのでご利用下さい。

★川辺いきものの森情報

 河辺の森ではスズメバチの活動が活発になる季節を迎え、キイロスズメバチやオオスズメバチが目立つようになりました。観察路近くに巣が見つかった場所では観察路を通行止めにしたり注意標識を設置したり、学校などの集団での利用の際にはスズメバチと如何に安全に付き合うかを説明して、森の生態系の一員である彼らと人との共存の道を探っています。誰かが刺されると駆除してしまえとの意見が多くなるのではといつもびくびくです。
 一方、センターには新しい緊急雇用対策対応の遊林会職員が常駐するようになり、平日はセンターの窓やドァを開け放ち図書等が利用できる状態になっています。深まり行く秋の森の探索のおりには、レンジャールームに是非お立ち寄り下さい。私と丸橋は市役所とセンターを相変わらず行き来している状態です。センターの周りでは水辺の工事が進み池や水路に試験通水が始まりましたし、草原広場やセンター前の広場、進入路などの整備も始まります。

★連続講座「里山七彩」余話

 5回目の講座は梅原先生の「里山の植物」でした。一口に里山といっても、九州から太平洋沿いの照葉樹林や関東以北のコナラなどのナラ科の林、そして中間に位置するこの地域のアカマツ林という気候や土壌によって地域ごとの違いがあります。時代によっても水田への施肥のために過剰な収奪のされた江戸時代以前は禿げ山が点在し多くの山は灌木程度の植生、明治以降、防災の観点から過剰な収奪の規制と植樹が進められ森林の復活、燃料革命以降の全く利用されなくなった現在という具合に利用程度が異なり、そのままそれは時代ごとの植生の違いになっています。地域、時代により里山は様々な姿を持っていることを話されました。里山の保全はこうしたことに配慮しなければならず、全国一律的な保全方法などはなく、この森での様々な管理の試みを褒めていただきました。第2回の小椋先生の講座で京都周辺と関東の一部について詳しい講義がありましたが、今回は範囲を広げての講義です。
 もう一点はレッドデーターブック近畿研究会員である梅原先生が強調されたことは、私風に要約するとすれば、生態系は原因と結果の関係であり、特定の植物が絶滅したり希少植物になってしまうのはそれらに適した生息環境が変化したり破壊されたことによるものであるということです。レッドデーターに記載される植物は山野草として人に採取されたことによって減少したラン科のような例もありますが、通常は湿地や草原の植物が多く、山地の植物は少ないということです。それは湿地や草原が危機に瀕していることであり、かつての人の利用した明るい里山は草原性の植物を育む環境でもあったのですが、常緑樹に覆われるようになった里山では草原性の植物は生存できなくなりレッドデーターに記載されるようになっているのです。絶滅に瀕した植物を救うためには原因から解決しなければならず、里山保全活動はこの面でも有効です。この項は、我田引水です!
 6回目は番外といっては失礼ですが、急遽お願いしました杉浦銀治&浦田光雅両先生による「炭焼きは地球を救う大自然からの贈り物です」でしたが、当初にお知らせしていないこともあり参加者が少なくもったいない限りでした。両先生とも、燃料としての炭ではなく土壌改良材をはじめとする炭の効能とその理由の解説、炭を焼くことによって人の輪ができることを大事にしておられるように感じます。足尾銅山の精錬によって酸性土壌になり禿げ山と化した山々の緑化事業で炭を散布した場合の施肥量の抑制や根張り等の効果実例の説明がありました。それによると炭は多孔質なことで保水効果や有機物を分解する微生物の活動に寄与する以外に、理由は不明であるが水の分子の結合を小さくする作用があり植物の根が水分や養分を吸収しやすくしているそうです。スライドを使用しての世界の炭焼きの実状で驚いたのはブラジルでの多数の巨大な炭焼き窯が一面に煙を上げている場面です。後で気になって生産した大量の炭を何に使うのかと尋ねると石炭の代わりに製鉄に使うとのことです。アマゾンの森林伐採はハンバーグ用などの牛肉生産のための開墾だと聞いていましたが、そればかりではなさそうで、この場合はアマゾンの熱帯雨林の消滅に関して少し責任がありそうに感じる炭焼きです。
 杉浦先生は帰路、米原までの車中で湖岸のクロマツや里山の松枯れ、施肥過多による水稲の倒伏を見て、こうした問題解決のために如何に多くの炭を焼いて散布し日本の土壌を健康にするか、その為に自分に残された時間が余りも少ないことと為政者の無理解を嘆いておられたように感じています。銀爺の夢は灰ならぬ炭を蒔いて現代の花咲爺さんになることのようです。(勝手な決めつけをしとるとお叱りを受けそうですが。)
 翌日も番外の番外講座ということで、前夜、質問の時間がとれなくて疑問を持っている人と炭焼き窯の製作に参加しようという人が集まり、両先生を囲んでの話となりました。その場で炭焼き窯設置場所の確認や地ごしらえの方法、製作する窯のタイプについての検討もお願いしました。製作図面が届けば炭焼き窯の製作が始まる予定です。目標は湖沼会議の時期に火入れ!

 10月12日(金)は、県立大学の荻野先生の「世界の森、そして里山」です。世界の森をバックに大きな視点で里山を考える講座です。

★10月の作業日の昼食メニュー

 芋御飯とすいとんかな? すいとんに入れる野菜などの差入れ歓迎します。


10月の週日活動は、八日市高校生との共同作業のために水曜から火曜に変更します。
10月12日(金)午後7時〜 最後の里山七彩講座  講師 荻野和彦氏
8月24日(金)午後7時〜 里山七彩番外講座 炭焼き地球を救う・・・・ 講師 杉浦銀治、浦田光雅氏
発行者:八日市市建部北町 河辺いきものの森ネイチャーセンター内 遊林会 世話役 武藤精蔵 Tel 0748-20-5211
間もなくスタート http://www.bcap.co.jp/ikimono/yuurin/index.html 河辺林通信バックナンバーもご覧になれます!


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