'01年09号 No.40

★作業日あれこれ

カラスに襲われたカブトムシの残骸

 7月25日の週日作業日は、夏真っ盛りで前日は日本列島で観測史上初めての40度が観測されたという猛暑の中でした。午前中はナギナタ擬き(下草刈り用鎌)を手に森のいたるところでお目こぼしにあずかろうとしている今年発生した細い竹を見つけては伐るという作業です。中にはシニア組に混じって毎日の楽器のビオラの弓に代えてナギナタを振り回す女性の姿もありました。午後の作業では、森を歩けばカブトムシの角や頭部の残骸だらけなのですが、これはカラスに食べられた痕で、カラスからカブトムシを守ろうということに衆議一決。釣り糸をカブトムシの保育園の周辺に張り巡らせて、カラスが近寄れないようにしましたが、オールド・ボーイ達の中にはにっくきカラスをゴムを使ったパチンコでと枝を利用してY字型を作る人も登場、いにしえのガキ大将がパチンコ片手に森をパトロールする雰囲気でした。翌日、炭焼き名人はひとりで森に現れ、保育園だけではとカブトムシが樹液を吸いに集まるクヌギの周りにも釣り糸を張って防衛を図りました。その次の日に生きているカブトムシが5匹、樹液の出ている場所で発見され、対カラス作戦は成功しました。その後、久々の雨の翌日、キノコ観察をパチンコ片手にするキノコ博士の姿も目撃されました。
 8月第2土曜日の作業は、お盆の行事や暑さのために例年一番参加者が少く毎年午前中だけの活動を細々とこなしていますが、今年は例月通りの賑わいで50人には届きませんでしたが40人ほどの参加がありました。今回、力を入れた作業は草原広場のクズ退治です。作業の必要性などは次の項で説明していますが、クズのつるを見つけてたぐり始めるとクズはつるの途中から地面に新しく根を張っているのがわかります。株を見つけてつるを切っただけでは、クズはイチゴのライナーのように切られたつるの途中の新しい根から養分や水を取り込みダメージを与えられません。そこでクズのつるを見つけ次第引っ剥がすためにたぐり始めると、思ったよりつるが長いことや途中で他のクズと何回も交差しており、今は目立ちませんが想像以上にクズが草の間を縫い広場を占領しているのがわかりました。タケに続いて草原のクズ退治、これから真夏の作業の定番です。

★里山と草原 タケゴンとクズゴン

クズの花

 タケの伐根をして2年目の夏を迎えた広場には、昨年とは見違えるようにホタルブクロやオカトラノオ、ヤマウドなどの草が茂りチョウやバッタなどの昆虫の住処となっています。昨年の今頃、草の疎らな伐根跡に給水車を乗り入れてケヤキに散水してましたが、現在では草花が茂り車を乗り入れることなどできない状態です。この草原広場を在来の草花の生息する豊かな生態系として森と共に残そうとしていますが、森と同様の問題を抱えています。草原の中を調べてみるとパイオニア植物のカラスザンショやアカメガシワなどの木本が成長を始めていますし、クズは今は目立ちませんがつるを縦横無尽に張り巡らし草原の勝者足らんと狙っています。クズはマメ科で表土のある土壌に適し、太く丸太のような根にでんぷん(葛粉)を貯え毎年勢いを増すことができます。弱点は強い日照を必要とし森の中には侵入できないことです。こうした性質が日本が世界に誇るグランドカバー・プランツと飼料用としてアメリカなどで最初は重宝されたのですが、今やその強さが彼の地でも環境の破壊者として問題になっているようです。
 森とタケ問題同様に適切な「管理」をしなければ、草原は生命戦略に優れたクズに覆われて所々にクズのまつわり付く木本が見えるといった状態になり、多くの動植物の生息する現在のこうした生態系は消滅してしまいます。じゃ、どうして以前はそうでなかったかというと、かつて草原は農家が耕作用に飼う牛の飼料を得るために常に刈り取られ、その中でもクズは家畜の嗜好性の強い草として人気があり、現在のように空き地を一面に被うようなことにはならなかったのです。道路や鉄道の法面などでは草を刈る権利が入札により売買されたようなこともあり、苦役として除草する現在からは想像できない資源としての利用があったのです。
 里山と同じ図式が見えてきます。農村生活の変化でクズなどの草が不要になり、豊かな生態系の草地では人の収奪を逃れた木本やクズが猛威を奮い、単調で人に疎まれる存在になってしまったのです。この森では、草原も林床同様に管理する必要があると考え始めました。

★湖沼会議関連事業の取組み

 11月11日(日)より16日(金)まで大津で世界湖沼会議が開催されますが、河辺の森はこの際のサテライト会場に指定されており、10日より会議参加者がシャトルバスで同会場を訪れることが可能です。遊林会では11日に湖沼会議関連事業としてシンポジュームを計画しています。10日は定例の作業日として、季節も良くあるがままの里山保全活動の見学や体験をしてもらおうと考えていますが、この日には例年布施公園で実施されている「大空と遊ぼうよフェスタ」を隣の愛知川河川敷に移し、サテライト会場を訪れる人にこちらも楽しんでもらおうと同フェスタ実行委員会では計画されています。さて、当方の11日のシンポジュームですが、10日を前夜祭、11日を里山に取り組む仲間での熱いシンポにならないかと考えているのですが、現在、全くの白紙状態で少々焦り気味の状態です。大義名分よりも琵琶湖を取り巻く里山を守る仲間の顔見せと割り切るつもりです。

8月22日(水) 9月26日(水) 週日活動を実施! 森の居酒屋は9月5日
9月8日(土)午前9時(遅刻可)より 作業開始
主 催 者 : 遊 林 会

連絡先:八日市市 花と緑の推進室 Tel 0748-24-5658 Fax 0748-24-0752 当日連絡先:携帯(武藤)090-3729-2344
Eメールでも、ご意見をお待ちしています。E-mail:seizo-mu@mx.biwa.ne.jp

★森の居酒屋を開店しています

 7月より第2土曜日の前の水曜日、午後7時頃より遊林会の打合せを森の作業小屋に集まれる者で、食事をしながら開催しています。誰でも参加できますが、若干の会費と帰る手段についての配慮(!?)が必要です。森の状況や問題点、活動内容などを協議しています。この会合には、今のところ早寝早起きのベテラン組(ゴメンナサイ!)はおひとり、女性の参加はゼロですが、どなたでも歓迎します。次回は9月5日、お待ちしています。

★日本人が製作したセンス・オブ・ワンダー

 8月の作業日の午後、センターに残っていた者で翌日の「センス・オブ・ワンダー」の試写会をやろうということになったのですが、映写技師で下戸の某県会議員氏以外は全員寝てしまい途中で打ち切り、面白くなかったのです。非難を恐れずに言うならば、この映画はレイチェル・カーソンの個人崇拝者が仲間内で作ったホームビデオのレベルで、センス・オブ・ワンダーの心を本当に理解し伝えようと考えるならば、カーソンの別荘で映像を使って長々と訳文を読んだり、時間が不足するために充分な自然の移ろいのカットが撮れないアメリカで撮影する必然性などなかっただろうと思われます。センス・オブワンダーはカーソンが次代を担う子ども達へ自然の息吹を伝えようと想いを綴った作品であり、日本の自然を使って子ども達に伝えることの方が日本人が製作するこの映画として必要なことではないのでしょうか。居眠りの言い訳かも知れませんね?

★連続講座「里山七彩」余話

 4回目の講座は小池先生の「資源としての里山」でしたが、講演に先立って森を案内してセンター付近まで帰ってくると同行の県立大の野間氏と共に行方不明に、大声を出して呼んでみるとセンター裏の野外に設置の冷暖房装置の所から現れる始末。センターには現在ではランニング・コストの安い灯油式ヒートポンプチラーによる冷暖房システムを導入していますが、まずここからこの施設の姿勢を点検されてしまいました。先生の話によると、日本で1ケ所だけ木質ペレット(木材を粉砕・圧縮してドッグフード程度の粒にした高カロリーの燃料)を利用したヒートポンプチラーがあったようなのですが、設備更新でメーカーの辞退にあい無くなったとのことです。(なんと先を見ることができないメーカーだろう!)
 循環可能な風力、太陽光、バイオマス等の各エネルギーは潮汐と地熱を除けば太陽エネルギーに起因するものであり、毎年使用できる総量は有限だけれども地球に付加をかけないエネルギーである。今回の講座はその中の木質バイオマス・エネルギーについて、お話しいただくことになっています。木質バイオマスといえばスウェーデンというイメージがありますが、木材を燃料に使用した火力発電や地域熱供給システムの例を示され、我々の既成概念では地域熱供給システムはこうした国々では昔から整備されており、その燃料が木材になったと漠然と考えていたのですが、石油ショック以降の脱石油政策の一環として、戸別の石油ボイラーに代えてごく最近に木材燃料を効率的に使用するために整備されたというのが正しいようです。勿論大きな施設もありますが、その供給規模も200戸程度へ供給する木材チップを使用したほとんど自動化された小さなシステムの設置(我が国のプロパンガスの集中供給システム程度か)、それ以下の人家の集中していないところでは木質ペレットを使用した戸別の給湯器設置という考えで進められていることです。印象的であったのは、それらのシステムはコンパクトであるが燃焼に際して給排気を燃焼条件に合わせて完全にコントロールしてダイオキシンや酸化窒素の発生を抑え、燃料供給も石油の使用と遜色ない程度に自動化され、燃料供給の際に汚れない、万一こぼしても問題がない、更に経済的にも石油を使うより安いから普及しているということです。その話の後で、日本での森林伐採現場で木質資源である残枝が大量に放棄されている様や、製材所で端材を焼却炉で処分(現在はダイオキシン問題で中止に追い込まれ産業廃棄物に)しながら木材乾燥のために灯油ボイラーを設置している日本の一般例を見せられると言葉が出なくなります。日本の燃焼技術は石油については優秀だけれども、木材燃焼については積極的に開発されていないこと、ボイラーに関する各省庁ごとの縦割りで規制が多く、こうした安価なヨーロッパの機器を使用できないことの説明がありました。もっとも、ヨーロッパの装置のコントローラーに日本製品のロゴが付いているスライド説明のおまけもありましたが。
 以上のような現状を踏まえて如何にするべきか? 当面の木質エネルギー利用は、自動点火、熱量調整や燃料供給が自在で灯油に価格でも太刀打ちできる木質ペレット燃料の利用推進が適当。石油ショックの後、我が国で雨後のタケノコのように建設されたけれども消費が確保されずに消えていった木質ペレットの製造プラントを再び建設し、まずは消費が拡大されるまでの期間、小中学校などの行政機関での燃料利用を図って装置稼働の下支えをするべきである。経済的に採算が採れれば消費は拡大し、木質バイオマス・エネルギー利用が進むというものです。
 これはあまり言いたく無いなぁと言いながら、ご自分の研究室で焼き物焼成に木質ペレットを使用したシステムの開発を手がけており、木を燃やすので木灰の自然釉による窯変も可能で、燃料に木質ペレットを使用することによる付加価値も生じ勝算ありという話です。遊林会も活動によって発生する木材を大量に消費しそれによる付加価値も生じる陶芸の燃料に使用することに至ったことを考えると原始的とは言え狙いは同じで、遊林会も健闘していると感じてしまいました。竹の木質ペレットへの利用はそのままでは粘りのために障害があるが技術的に解決できる方法はあるということでした。
 次回の里山七彩は、8月24月(金)午後7時より、番外講座、杉浦銀治、浦田光雅両氏の「炭焼きは地球を救う大自然からの贈り物です」
 9月7日(金)は、この森の保全を考え始めた頃に開催した河辺林シンポでパネリストをお願いしたことのある明治大学倉本先生の「里山の保全」です。変わってしまったこの森についての意見も楽しみです。

★9月の作業日の昼食メニューは

 例年8月は昼食を用意しないで解散なのですが、この日、ソメヤンハサケガスキー氏が素麺と野菜の天ぷらを調理してくれましたので、一同、いつも通りの賑やかなお昼を楽しでしまいました。ありがとうございました。9月の昼食は思案中、ご飯は炊く予定です。


10月8日(体育の日)午後、センターで、大阪センチェリー交響楽団メンバーによる室内楽を予定、詳細は次号で
8月24日(金)午後7時〜 里山七彩番外講座 炭焼き地球を救う・・・・ 講師 杉浦銀治、浦田光雅氏
発行者:八日市市建部北町 河辺いきものの森ネイチャーセンター内 遊林会 世話役 武藤精蔵 Tel 0748-20-5211


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