'01年08号 No.39

★作業日あれこれ

サンコウチョウ(鈴木まもる画)

 森の西のはずれのケヤキの林では、生き残っているタケの根との戦いが続いています。6月定例作業、湖東信用金庫の皆さん、体験学習の中学生、週日作業、商工会議所青年部の皆さん、滋賀県造林公社の皆さんによってようやく今年のタケノコから発生した七夕飾りにちょうど良いような大きさのタケをすべて刈ることができました。隙間なくみっちりと高さ3メートルほどのタケがススキ原の状態で生えている風景とそれを刈り取る様を想像してください。皆様、ありがとうございました。これからも可能な限りダメージを与えて兵糧攻めを成功させようと思いますが、今年のタケノコの発生数量を考えると我々は勝ちつつあるのだろうかとつい考えてしまいます。タケが細くなっていることに勝利を信じましょう!
 7月の定例活動日は梅雨が開けた何とも暑い日で、森に侵入したセイタカアワダチソウの引っこ抜きやタケの後始末にみんなで大汗をかいてしまいました。この日は、作業開始満3年を越えた記念日、ソメヤンハサケガスキー氏はご存知焼ぞば屋で登場、夏野菜の炒め煮とこの日から登場の瓶ビールと村松氏のコップやお椀といった具合に差し入れの燻製や漬け物も混じって賑やかなお昼で、午後からの作業もなしで戴きすぎてセンターの救護室で転がっていた人も初登場。この中で誰もが口ずさめる唄で登場のアカペラで慰問の2人組には申し訳ないことでした。彼女らには再び湖沼会議関連シンポでも参加をお願いしましたので、次回はホールで歌っていただきます。よろしく。

★タケを使った陶器焼成、結果は?

真夜中の窯焚き

 6月29日(金)夕刻、連日の準備作業の疲れとこれからの徹夜作業に備えて仮眠中の村松氏は、気になってしかたのない外野に起こされて窯に火入れをしました。ゆっくりと温度を上げるこの作業では普段は途中で火が消えてしまうこともしばしばのようですが、この夜は2時間置きに誰かが現れて眠らさせてはくれなかったそうです。朝6時過ぎには炭焼名人、以降も次から次に遊林会のメンバーが参加、賑やかで長い1日が始まりました。この時点での窯の温度は600度、目標は夕方6時に950度、夜9時頃に1100度、最終は1200度です。夕方には京都精華大学と県立大学の学生諸君が参加、作業量も内容もハードで体力の面から心配だった夜の作業に若者が加わってくれて一安心です。薪と異なりタケを燃やすことによってどのような問題が生じるかは「やった人がいないからわからない(村松言)」状態で、その場その場で解決を求められますが、日付が変わる7月1日未明近くに窯の温度が1200度を前に上昇せず、燃やせども燃やせども下降を始めてしまいました。煙突を急ごしらえで継ぎ足して空気の吸引を良くしてみたり、焚き口付近や炉床をいじり回し、様々に条件を変えてみましたが改善されません。1時間以上この状態が続き、遂に村松氏から「このままでは無理みたい、(実績のある)薪に切り替えて温度を上げようか?」と相談を受けることになりましたが「人手もタケも充分にある、もう少し続けよう。」と応えました。村松&オーチ殿のふたりには、この時の私は憑かれたように見えたそうです。
 やがて薪とは違った燃焼のサイクルや空気供給のリズムがつかめ、窯は徐々に温度を上げ「1200度キープ、持続目標30分」と宣言することになり、家族が寝静まった後に家を抜け出して参加した消防学校教官が火消しならぬタケの投げ入れ追い炊きに専念しながら「おっー、目標が示されるとがんばれるなぁー。」、みんなにも先が見えてきました。この後、1時間半に渡って温度を維持したのです。大学生諸君(女性の方が多かった)がそれぞれ黙々と竹の節を抜いて窯の横に運んだり、灰をかき回したり、窯にタケを放り込む時は腕の産毛まで焼けてしまうのですが、地味でしんどい作業に専念してくれたおかげで目的を達成することができました。その後、村松氏が「彼らがおらんかったらできんかった。あんたのタケだけで続けるとの決心も彼らがおったからや。」と話しかけてきましたが、その通りだと思います。彼らに助けられてタケだけを使った焼成ができたにもかかわらず、その日の朝、私と彼は窯の前で残されたタケの山を眺めながら、彼は焼成温度が確保できた充実感から、私はもう一度焼くだけのタケがあるという気持ちから、もう一度やろうとの声を出してしまいました。また、頼むぜぇー、大学生諸君!
 窯開けは、4日(水)夕方、いつもはこっそりと独りで開けるようですが、この日は読売新聞記者まで駆けつけて衆人環視の中です。最初に手前の大きめの器から出てきます。まず一声、焼けてる!という当たり前でほっとする一言。竹灰は木灰よりは高温でなければ熔けにくいようで、薪で一度焼いた木の灰の熔けたものをタケで二度焼きすると二種類の灰が混じり合って熔け面白さが出ることや、磁器の土で焼いた物にはほんのりと火色が付くなど、タケを燃料に使用した作陶の方向を見出せたようです。定番に胡座をかかない陶芸作家、村松氏の新たな創作が始まりました! 彼から提供を受けるぐい飲みは遊林会への活動協力者の感謝の印として、お椀は少し贅沢なのですが彼の意志ですので遊林会の昼食の食器として利用させていただきます。

真夏は真夏なりに 8月22日(水) 週日活動を実施!
8月11日(土)午前9時(遅刻可)より 作業開始
主 催 者 : 遊 林 会

連絡先:八日市市 花と緑の推進室 Tel 0748-24-5658 Fax 0748-24-0752 当日連絡先:携帯(武藤)090-3729-2344
Eメールでも、ご意見をお待ちしています。E-mail:seizo-mu@mx.biwa.ne.jp

★サンコウチョウの飛来と営巣(?)

 5月末に丸橋が「珍しい鳴き声がしたのでCDで調べたらサンコウチョウなんですが、そんなことないですよね。」、「そんなことは考えられんなぁ。」と自己規制をしてしまっていたのですが、イヤーゲームの指導で訪れられた長谷川有機子さんが「あれは間違いなくサンコウチョウですよ。」。6月9日の活動日にも多くの人が・・・・ホイホイホイというあの特徴のある鳴き声を聞くところとなり、野鳥の会の外村さんも、下手な鳴き声だが間違いない、しかし、移動してしまうだろうという感想でした。それから1ヶ月が経過しましたが、サンコウチョウの鳴き声は今も森に響いています。丸橋は休日の度にセンターにこもって写真を撮ろうと構えていますが、ピンぼけ、目の後ろから胴体にかけて木の枝にさえぎられたのをものにしただけです。雌であの長い尾(雄だけ)も写っていませんでした。
 サンコウチョウは薄暗い森が住処の夏鳥で、越冬地(マレー半島、スマトラ島付近)が荒廃し激減したようです。飛翔昆虫を補食する鳥ですので、この森に住み着いたのは暗い森があることと餌の昆虫が豊富だということでしょう。1ヶ月半に渡って鳴き声を聞いていますので、営巣は間違いないでしょう(巣のある付近には立ち入らないようにしています。)。来年以降の飛来が楽しみです。この森での豊かな生態系を取り戻す試みがサンコウチョウを呼び寄せたと考えると嬉しくなってしまいます。あの鳴き声が聞けるのもう少しの期間(7月中旬まで)です。

★「河辺いきものの森」情報

 この森での市による大きな工事の施工は今年が最後で何種類もの工事を計画していますが、センター付近では水源・水路工事を始めました。サンコウチョウの営巣のこともありその辺の配慮をして実施をしていることはもちろんです。この工事は昨年度砂利採跡地に整備した池まで、かつて森の中を流れていた懸ケ口井(カケグチノユ)の川道を通してポンプアップした伏流水を途中で溜まりを作ってあふれさせながら導くものです。草原広場やセンター付近の整備、解説版や案内標識の設置、展示ホールでの展示品の製作と設置、木道の延長なども順次、着工します。
 遊林会有志によって市議会へ請願された近江鉄道新駅設置については、継続審議となり採択の是非は次議会へと先延ばしになりました。市長は最終日に、採択されておれば世界湖沼会議のサテライトステーションである河辺の森に環境に優しい鉄道でお客様を迎え、環境に対する八日市の取り組みを発信できる機会になったかも知れないと異例の発言をし、傍聴席の請願者に応えました。いずれにせよ需要があるのかないのかが一番の問題であり、我々は湖国の里山学校である河辺の森への体験学習に訪れる人が増え、鉄道の需要開拓になるようなプログラム開発に努めなければと考えています。ご支援を。

★連続講座「里山七彩」余話&番外講座

 3回目の講座は、井鷺先生の「里山と竹を考える」で、日頃よりタケに翻弄され何とか打ち勝つ方法を伝授していただけるのではないかと我ら一同耳を澄ませていたのですが、結果はタケの生命戦略のすごさに脱帽するばかり。タケの中でもマダケ属、特にモウソウチク中心の話でした。この属のタケは桿(主幹)を発生からほんの1ヶ月ほどの間に本来の高さである15メートル前後に成長させ、その後は光合成で生産する養分を他の植物のように幹を太らせたり高くしたりするのに使わず、せっせと地下茎に貯え翌春一気に新しいタケを成長させるエネルギーとして消費するとのことです。我々の活動では、ケヤキの森に戻すエリアで七夕飾りに使えそうな太さのタケを無数に発生させているのを兵糧責めと称して一網打尽に刈り払い、地下茎に養分を貯えさせないようにしてますが、充分なタケを地上に送れなかった場合、彼らは桿のない枝だけの状態で発生し光合成をして根に貯えます。これらの葉は冬でもきっちりと光合成をするとのこと!
 この森の上流の川合寺町周辺では120年に一度のマダケの開花(モウソウチクハ67年、ハチクは不明とのことでした。)がそう遠くない昔にありました。不稔性で種子を作らず一部の地下茎を残して再生する作戦のマダケは、開花で枯れた後、残された根から細い竹を伸ばし数年後に今までなかったような太さの竹を発生させて元の竹薮に戻ったそうです。手を抜いては元の黙阿弥になります。
 優れた生命戦略と繁茂を抑えるほどの天敵も見当たらないタケは、モウソウチクの故郷の中国では地平線の彼方までモウソウチクというような景観も存在するそうです! これを防ぐ方法は森に進入したタケノコを蹴飛ばすこと。彼らが侵入できないのはタケの高さ以上の樹木があって侵入しても充分な光合成を行うことができない森林だけのようです。河辺の森にもそんなエリアが島状にあります。
 マダケやハチクは山の斜面に生息域を広げられないが、モウソウチクだけが土壌の乾燥にも強く山を登れるそうです。今の季節、この地域の山の斜面でもエリアを拡大しているモウソウチクの葉の色が山の斜面に目立っています。山林の所有者や地域に情報を提供して無制限な竹林の拡大を阻止する必要があります。竹林の拡大はそれ以外の動植物の生存を危うくします(出席者の中からイノシシとサルがタケノコを食べるという報告がありましたけれど)。このようなタケの猛威の見本は、名神高速から見える天王山トンネル周辺の山にあります。頂上までモウソウチクだけです。
 残念ながら井鷺さんの話を聞いても竹林の拡大を抑える特効薬はなし、除草剤についても里山の生態系を守るという立場からは適切でないと釘まで刺されてしまいました。この森での人海戦術による結果をもって里山保全活動のデーターとするしかないのでしょうか。
 次回の里山七彩は、8月18月(土)午後1時半より、この森の生態系調査を担当した梅原先生の「里山の植物」

 炭焼きや炭の性質、炭利用の可能性などに関する里山七彩番外講座を国際炭焼き協力会の先生方の協力により実施できることになりました。8月24日(金)午後7時〜。杉浦銀治、浦田光雅氏両名講演。詳細未定

★8月の作業日は夏野菜のお昼と昼寝

 暑い季節には暑い季節に合わせた作業とゆっくりとした時間を楽しみます。盆の墓参りでそんなとこやないわいという声も聞こえそうですが、2年前の盆の作業日にはご先祖様に近い人(失礼)ばかりで驚いたことがあります。夏真っ盛りのこの日の作業も午前中だけとします。午前中で帰る人は帰る、残る人は作業場小屋やいろんな所で昼寝、その前に茄子やトマトをを使った簡単なお昼はいかが。野菜の差し入れ歓迎します。

8月24日(金)午後7時〜 里山七彩番外講座 炭焼きと炭の可能性(仮題) 講師 杉浦銀治、浦田光雅氏
発行者:八日市市建部北町 河辺いきものの森ネイチャーセンター内 遊林会
 世話役 武藤精蔵 Tel 0748-20-5211


▲前の号 | 河辺林通信トップ | 次の号▼

| ホームに戻る |