’01年02号 No.33

★作業日あれこれ


積雪にお辞儀をしている竹

 昨年最後の作業日は、暮れも押し詰まった27日でしたが、夜明けには雪が舞い周辺の山や梢はうっすらと雪化粧をしていました。もちろん夜が明けてもみぞれが降るような天候でしたが、もうこんな日でも作業中止とは考えることもできない遊林会の作業日です! いつものアラカシの木のそばには既に焚き火が熾されており、みぞれもなんのそのという感じでした。しばらく暖まった後、作業開始、管理を忘れていた竹薮の根切りの溝を越えたタケの伐採、炭焼組は新たな材料の調達作業に取り掛かりました。春には忘れずにタケノコを採ってしまわないと、溝を越えて竹薮が拡大してしまいます。作業参加者、5人。週日の作業は多くても10人台ですが、今年は炭焼窯の建設などもありますので回数も内容も濃くなるでしょう。新しい仲間の参加をお待ちしています。大勢の参加ありました新年初めての活動は次号で紹介します。

★ラッカム博士講演会の詳細

 日曜日の夜に「宇宙船地球号」という番組があります。私は、その時間、百薬の長の霊験がまことにあらたかで陶酔境に入っており、観ることがありませんが。ラッカム博士のイギリスのwoods:林についての講演があることを知った教官殿(どなたのことかは想像に任せます、教官です!)が、この番組で紹介されたイギリスのカントリーヘッジについてのビデオを貸してくれました。
 イギリスの農村地帯について我々が思い浮かべるひとこまに、丘陵地帯を馬を駆ってキツネを追う光景もあるのではないでしょうか。そんな場面で土地の境界に沿って設けられた延々と続く生垣がカントリーヘッジです。この生垣は牧羊のための土地の囲い込みから発生しており、古い物では千年程の歴史のある物もあるそうです。田園地帯の優れた景観を創造すると共に、先のキツネ狩のキツネや鳥、昆虫などの住処でありこうした生き物の移動路ともなって優れた生息環境を提供していましたが、牧羊の衰退から耕作農業への変遷により必要性を失い、管理の放棄や撤去されたりしているそうです。
 ここまで書くと、そりゃー日本の里山と同じじゃないか!ということになります。ラッカム博士の講演会ではこのような問題に触れていただけるものと思っております。氏の講演テーマは、「イギリスのWoodsの保全活動の歴史や現状」です。
 講演会当日、氏の講演に先立ってこのビデオを上映します。ビデオを観た上で講演を聴けば、氏の講演をより良く理解できるのではないでしょうか。
 この森の入口に竹垣が作られたのに気付かれた方も多いでしょうが、あれは八日地南高校緑地デザイン科の高校生諸君が実習で作ってくれたのです。このこと以外にも彼らはこの森の定点観測などを試みており、河辺林の現状や四季の変化を記録しています。彼らにもその成果を発表してもらおうと考えました。
 以上のことを織り込み、1月20日、当日の予定は下記の通りとしました。

  1月20日(土) 八日市市立図書館2階集会室にて
  午後1時30分 「宇宙船地球号」ビデオ上映
     2時    八日市南高校緑地デザイン科発表
      同10分  ラッカム博士の紹介と主催者挨拶
      同15分  ラッカム博士講演と質疑応答
     4時終了予定(変更有り)

 多くの方の参加をお待ちしています。駐車場については一般利用者の迷惑にならないように、できるだけ南200mの八日市市文化芸術会館や駅前のアピア駐車場をご利用いただけると幸いです。

★ばんとこ(晩床?)からあれこれ思う


土葺きの資材草庫(説明は次ページ)


 あの森女史が持って来た素焼きの円柱で灰の入っている蓋付きの容器の使用目的が丸橋には理解できません。他にも横から見ると台形に蓋が載った形、トンネル状で空洞の部分に引き出し風の灰入り容器を格納する形などがあり、名前は「ばんとこ」と言います。年輩の方にはおわかりでしょうが、布団の中に入れて暖を採ったこたつなのです。夕べの食事を用意する時におくどさんでできた熾き火を灰に埋めて熱源としました。朝に火鉢に熾き火を入れる際に灰の中にアラカシの木片を入れ夕方にはすっかり火が回り、いわば備長炭に火が着いたような熱源を使う例もありました。やがて熱源が豆炭に、容器も蹴飛ばしても安全な豆炭あんかに代わり、最近では電気毛布です。木材を燃料として使用した時代、寝るための暖を採るのにもこうした道具を使っていました。現在、私は真冬でもこたつを必要としませんが、あの時代には寒くて震えており、こうしたこたつの温もりがなければ寝られませんでした。それは、地球温暖化の影響だけではなく、あのころと比べると栄養状態が良くなって身体の発熱量が増えているためかとも考えています。貧しくエネルギー使用量の少なかった時代、里山の木々は生活になくてはならないものでしたが、地球上の多くの人々にとってはこうした生活が今も現実の世界であることを忘れてはならないと自分に言い聞かせています。

★雪と雑木の森

 年が明けて最初の土曜日に湿った重たい雪が数センチ積もりました。獣の足跡でも見つけられないかと森に出かけましたが、降り続く雪に足跡は消されており(そのように信じています!)足跡の発見はできませんでした。
 キツネやタヌキは、依然、隣の森に引っ越したままになっているのでしょうか。12月の週日作業の時に新しそうな穴を見つけたとの話もありましたので、帰って来ているとは思うのですが。
 わずか数センチの雪なのですが、森の中では今までなかったことが発生していました。それは多くの常緑樹がわずかな雪の重さに耐えかねて、頭を地面に擦りつけてお辞儀をしていたことです。今までは過密な状態でしたので、お辞儀をしようにも隣の木が支えをしてくれるのでできなかったのです。ある程度すかされた森ではもたれ合う木がありませんのでこんな具合になったようです。幸いにそれ以上の積雪がありませんでしたので、後日確認に出かけると折れた木はほとんどありませんでしたが。一方、冬枯れの落葉樹は葉がありませんのでお辞儀をする木もなく直立したままでした。もちろん、この季節、雪の重さで道路を塞いでしまう道路管理の障害になる竹どもは竹薮の中にいくつものアーチを描いていました。無風状態で湿った雪をほんのわずかいただいただけなのですが、森はそれぞれの植物の積雪に対する適応度合いを見せてくれていました。今より積雪量が多く、人の手が入ってもたれ合う木などなかった昔のこの森では、この点でも落葉樹の方が地域の気候に適応していたようです。

★「河辺いきものの森」情報

 いつも作業の時に食事をしたりミーティングをする場所近くの管理道路に面して、資材草庫と名付けようかと考えている小屋ができました。どうして草庫(倉庫)かは屋根を見ていただければ納得していただけるでしょう。厚さ20p近くの土葺き屋根なのです。本当は、ネイチャーセンターを土葺きにして環境(大気、水、気温:屋上緑化はco2を吸収して酸素を吐き出し、雨水を一時的に蓄え、気温を下げる→都市にこそふさわしい)に優しい建物を表現したかったのですが、先駆ける者の宿命でネイチャーセンターはおろか屋外便所、作業小屋からも駆逐され、ようやくこの資材草庫で許されて実現を見たのです。ニラハウスやタンポポハウス(土葺き屋根で話題になる有名な事例)にはしませんが、何が生えるか最初から植えずに様子を見ようと思っています。ふさわしいのはジャノヒゲ、ヤブラシ、シュンラン、スゲの仲間、少し大きくてハギも面白いかと考えています。今年の秋に経過を見て植えることになるかも知れません。市内で屋根が土屋根になっているのは布施公園の通称「カモン(屋上の植物はヒガンバナ)」、野鳥観察施設に続いて二棟目の建物です。1月より砂利採取跡で池や流れを作る工事が始まっています。ここの池や水路の水は、ネイチャーセンター手前の懸ケ口井(カゲツチノコ)横の井戸で汲み上げて昔の水路に沿って流し込むことになります。上流部の水源工や水路工はハイハマボッスの発見がありましたので来年度工事にして下流部分の整備から始めたものです。この部分は砂利採取で完全に森が破壊されていますので、少々自由に絵を書くように工事をして、湿地や水と生物の関係を学ぶ場にする計画です。
 ネイチャーセンターの建設は、13年度までかかる計画になっていましたが、国の公共事業の補正により建設費の全額が今年度の予算で措置されました。よってセンター建物の完成は3月末、それ以降は展示施設や観察路の案内標識整備にかかることになります。ネイチャーセンターの完成時には、薪で蒸籠を蒸して餅つきをしよう、おろし餅で一杯といきましょうか。こうなるとビールよりは冷酒ですね。

★遊林会の広報活動

 元旦の夕方5時半よりBBCテレビで県提供のサンデーイレブンのお正月特別番組が放映され、県知事、柳生弘氏を迎えた番組に遊林会からも4人が参加しました。NHKの生き物地球紀行のナレーションでおなじみの柳生氏は、里山にも造詣が深く私たちの活動にも大きくうなずかれ、録画後、同志としての握手を求められました。
 活動内容についての講演依頼も相次いでいます。13日近江八幡市、18、19日八日市県事務所職員研修、21日大阪府池田市「五月山シンポジュウム2001 里山ホリディのすすめ」での事例発表などが今月の予定です。21日の池田市のシンポには、当方でワゴン車を用意していますので興味ある方は連絡をお願いします。
 こうした内容をほとんどこの会報ではお知らせしていませんでしたが、会員の皆さんにとって私たちの活動が他に及ぼしているバロメーターになるかと思い可能な限り記載することにしました。
 講演等とは別に、木造建築についての調査研究をされている「木造建築研究フォラム」発行の「木の建築」という会誌があります。この会誌の50号に「里山を守る−市民に開放する山・森」というタイトルで遊林会の活動内容が写真入り4ページで記載されました。原稿料までいただいてしまいました。滋賀県の21世紀記念事業協会の広報誌等にも取り上げられております。こうした出版物等はネイチャーセンターでの収蔵を計画しています。
 思いがけないお客さんもありました。東大助教授の井上真氏が共同研究の日本の森林の現状調査の聞き取りに現れました。こちらとしてはよその状況を聞き出そうと居酒屋に誘い出し歓迎(?)したのですが、フィールド・ワークと空手で鍛えた氏の酒量と弁舌に煙に巻かれてしまい肝心の話は・・・・(最近、酒量が落ちたとの話でしたが)。
 作業日だけでないこうした活動も遊林会では実施しています。事務局で対応できなかったり皆さんに参加をお願いしたいプログラムでは、今回のBBC放送のケースのようにご支援をお願いしますのでよろしく。

★事務局スタッフの交替

 緊急雇用創出対策事業の摘要を受けて雇用していました事務局スタッフが制度による雇用期限を過ぎましたので交替しました。新しいメンバーは、指導者が西村治さん、事務担当は只今、空席です。

★2月の昼食は、きりたんぽ鍋

 昨年、好評だったきりたんぽ鍋をします。きりたんぽ材料のご飯はこちらで用意します。お楽しみに。


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