’01年01号 No.32

★新しい年を迎えるにあたって


春を待つシュンランの花芽

 今まであまり意識しなかったのですが、活動を開始して4年目の正月を迎え、新年の区切りとして抱負のような記事も書く必要があるのかなと考えてしまいました。自然態の活動には改まって目標や意識もないのですが(理屈が長いなあ、とっとと言え!)・・・・。
 一言()申し上げます。活動の継続が一番大きな目標ですが、そのために様々な工夫をしたいと考えています。新しい年には、炭焼きなど専門活動のスタートと森のガイドなど活動内容の拡大、スタッフによる合議制の確立、NPO法人設立などに目途をつけます。それぞれの活動で皆様のお力を必要にしています。肩をいからせず、今迄同様に楽しみながら活動を継続させましよう。今年も継続は力なりです。

★作業日あれこれ

 11月22日は秋晴れの空と木々の梢の黄葉に、季節の移ろいへの感動を誰もが口にしたくなるような日でした。中でも数日前には緑一色だったイタヤカエデの黄葉した梢には、作業参加者一同見とれてしまい、日々深まる秋と冬の訪れを感じたものです。そんな詩人ばかりの作業参加者一同は、晩秋の一日を満喫したのです。いつもはシニア組だけの活動になっているのですが、この日は代休中に森の前を通って作業に気付いた遊林会青年部長(自薦、今後、青年部長という名前で登場してもらいます。)も参加して年齢の幅が出ました。作業はタケの株をナタで割ってヤブ蚊の発生源撲滅作戦でしたが、効果の程は未知数です。次回の作業でも堤防沿いの株の始末をする予定です。
 忘年会を計画していました9日は、雨、雪、嵐を呼ぶ男(計画したシンポジュウムは大雪、台風に見舞われました。1月20日のラッカム博士の講演会や如何に?)の面目丸つぶれの快晴でした。落ち葉掻きやタケの間引き、薪作りなどに精を出したのですが、琵琶湖バレイ自然塾、大阪自然環境保全協会の皆さんの交流参加もあり賑やかな活動日となりました。もちろん、半日の作業の後は忘年会モードで盛り上がり、ノウサギを見かけなくなった森ではトラばかりが我が世の春を謳歌していましたとさ。この日のために片道10qほどを道を自転車で参加した○○氏は、帰りの道が勝手に曲がっとって何回も転けた、道の管理者はけしからんとか言っていました。無事にお帰りにはなったようですが。次からは、テントを持ち込んで夜の自然(人間)観察をしようという意見も出されております。只今、積極的に検討中! バロンシートとタケを使ったネイティブ・アメリカンのテント実験もしようと思っていたところだし・・・・。次回の活動日、賛成の方&帰るのが面倒な方は寝袋持参で作業に参加してみればいかがでしょうか。(マジ)

★今年森で目立った昆虫と理由(私見)

モミジの森の初冬

 迷惑な連中で昨年より増えたと感じたのは、スズメバチとヤブ蚊、増えたのを喜んでいたのはチョウです。ヤブ蚊は、竹林の間伐によって水が貯まる切り株が増えたためだと推測しています。スズメバチは、昨年まではこの森ではほとんど見かけず、クロスズメバチ(またの名はあの蜂の子として食材になるダバチ)ぐらいを見かける程度だったので、作業の安全のためにスズメバチがいないのをありがたいと喜んでいたのです。しかし、今年は非常によく目立ち、学校行事なんかでこの森に来る子供達には、まず、ウルシを見分ける方法とスズメバチと出会ったらどうするかを教えることにしていました。一度などは説明をしている最中に、いい具合にあの森女史の前にスズメバチが現れ、彼女は身をもって静かにしてやり過ごす対処方法を実演するはめになったこともありました。(もちろん、帽子を被ることや警告音を発している場合には一目散に逃げろと教えています。) これは非常に効果的でだったようで、森の中でスズメバチに出会っても不必要な恐怖心がなくなりみんなでフリーズと口をそろえて実践していましたし、家に帰ってスズメバチと出会ったらどうするかを親に説明する子もいて、親である市職員が我が子が得意そうにが話してくれたと知らせてくれました。こんなことも自然との付き合い方を学ぶという点で非常に大事なことだと考えています。
 このありがたくないお客さんが増えたのは、竹薮を撤去した跡や草原広場に草地が出現してスズメバチの餌になるチョウが大発生したことが原因ではないかとにらんでいます。チョウが増えたと喜んでいたのですが、キイロスズメバチやオオスズメバチの餌にもなっていたのではないでしょうか。この関係は、ヤブ蚊とトンボにも当てはまるのかと思っています。いずれにせよ、鬱蒼として草本の少なかった森に林床管理が及ぼした影響ではないでしょうか。我田引水なのか、それとも正当な推論なのか、その辺のことは厳密に調査をしたわけではないので不明です。
 余談:いずれにせよ、この森ではスズメバチも自然の一部として、又これらの危険から身を守る学習材料として、ウルシ類同様に一方的には駆除の対象にしない計画です。現代の世相では、森の入り口で危険の衆知と各自の責任を明確にして了解できない方の立ち入りを禁止し、施設管理者の責任回避が必要かも知れませんね。

★イカ、タコ、カニ、クラゲ・・・・?

 森でシーフード・レストランの食材が手に入ります!? これらの名前を聞いて、森の生き物が浮かんでくるようでしたら、かなりこの森の中毒になっています。イカはご存知イカタケ、タコはタコノアシ(水辺の植物、レッド・データー・リスト記栽種)、カニはカニノツメ(焼きガニのような色と形のキノコ)、そしてクラゲはキクラゲ(中華食材のキノコ)です。この内、どこでも見られるのはキクラゲだけで、残りはかなり珍しい生物でこの森の生態系の豊かさを象徴するものです。偶然とはいえ海の仲間の集合で、ほほえましい話題です。森女史の机の上には、塩辛と思えるようなイカダケやカニノツメの瓶詰め標本やタコノアシの種が置いてあります。味見をご要望の方は、どうぞ女史までお申し出下さい。標本は私の飲んでいるウイスキーよりは高いエチルアルコールに浸けられているそうです。

★「河辺いきものの森」情報

 ネイチャーセンターの鉄骨が組み上がり、およその姿がわかるようになってきました。基礎の時には大きく感じたのですが、柱が立ち上がると空間を捉えられるようになり、外の空間と比較するためでしょうか、小さく感じるようになりました。しかし、少し離れてみれば、作業小屋とネイチャーセンターは森の木々の隙間に押し込んだような感じです。その点では、森が主役のこの事業にふさわしい光景だといえます。残念なことは、展示ホールの天井空間をすっきりさせるためや経費の点から、集成材の梁という方法もあったのですが、鉄骨を使用したことです。森の中に鉄骨の建物というのは少々抵抗がありますが、外壁・内装共に木材を多用して木造風には見えますのでお許しください。
 建物の完成が見えてきましたが、市では、現在、展示ホールの中に入れる展示内容について設計を発注しています。大きなスクリーンやボタンを押せば動き出すような派手な施設は考えずに、最新の情報を手作りで更新できるような地味な展示を中心に計画しています。森に来たらセンターに立ち寄り、その時々の森の花暦や見所のお知らせを調べて観察路を歩く、冬枯れの森を歩いた後はストーブの火にあたりながら薪の音を聞く、そんな展示と使われ方を期待しています。もちろん、遠足でやって来る子供達のための展示も重要ですが。

★風呂釜、ありませんか?

 最近の教育課程の変更のためでしょうか、授業で森や樹木のことを聞きにやってくる小学生がいます。答えを聞き出そうとする彼らに、いつも君たちはどう考えているのかと質問をぶつけることにしています。緑(森)を大事にしなければならないという気持ちは強いのですが、水質や大気の浄化面での森の役割や木材は建築用材という面でしか、想像していたとおり理解できていません。子供達に薪で風呂を沸かしご飯を炊いていた話をすると信じられないという顔をします。日常生活に欠くことのできなかった燃料を継続して生産する場として里山の一面があるのですが、木を燃料に使用することを理解できるようにカマドを作る(施工は先代炭焼き名人)計画ですが、鉄製の風呂釜もオブジェ風に置いて解説しようと考えています。炭焼窯の近くに水を張った状態で据え付けて、メダカや水草を育てるというのはいかがでしょうか。問題は、昔の鉄製の風呂釜が見当たらないということです。木枠を使った釜はあるのですが、屋外での展示という点から難点があります。どなたか、お椀型の鉄製の風呂釜をご存じないでしょうか。くださーい!

★紅葉と桜を生かす森づくり

 お墓近くで人に知られることもなく育っていたモミジの木は、皆さんの作業で他の木を少なくしてもらってあの場所の主役になりつつあります。まだまだアラカシやコナラなどが生育の邪魔をしているのですが、それでもこの秋にはモミジの森の風情を感じさせてくれていました。緩やかにくねった観察路を抜けると陽の光を透して輝くモミジの森が見えてきます。うっとりとする美しさです。救い出すことのできたモミジの一方で、生存の危機にあるのがサクラです。かつて建部北町の集落から森を見ると、今のモミジの森の手前の部分では数多くのサクラが春を告げていたそうです。この場所にはサクラの木が多く昔を偲ばせますが、残された木は今では春になっても花を咲かせる力もなく下枝も枯れ上がり息も絶え絶えです。前号でW氏によるサクラの大木救出作戦を紹介しましたが、これからもサクラの救出作業を重点項目にしてサクラの森を再興しようと考えています。しかし、幼樹が見当たらない現状では、実生苗を確保するためにまず花を咲かせて種を得る先の長いプログラムになりそうです。

★ラッカム博士講演会正式決定

 先にお知らせしていましたラッカム博士の講演会が森林総合研究所の協力で実現できるようになりました。

講演テーマ  イギリスのWoodsの保全活動の歴史や現状

氏の略歴等 '64年ケンブリッジ大卒 現在、同大学教授
 専門は環境史。英国農村の自然景観を、過去の土地区分制度や農業技術、木の伐り方、生垣の仕立て方といった人の営みから解説した著書「The History of Countryside」は英国のベストセラーです。

 里山も人の営みが創りだした農村風景そのものであり、氏の講演は、国や自然、農業環境は異なっても私たちの風土に共通のものを感じさせてくれると思います。皆さんの参加をお待ちしています。

★間伐したタケの利用

 11月の作業からタケを伐る適期ですので、竹林の整備をしていますが、徐伐したタケの利用に頭を痛めています。欲しい人があればどうぞご利用下さい。

★1月の昼食は、鏡餅の有効利用

 21世紀初めての活動日は13日です。鏡餅を使ったあれやこれやの料理を考えます。定番のぜんざい、焼き餅、納豆餅などにして食べましょう。それまでカビさせないようにして持参していただけると助かります。


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