’00年12号   No.31

★作業日あれこれ

 10月25日の週日活動日はそれほど強くないけれども夜半から雨。森に出かけると、想像通り炭焼名人とお弟子さんのキノコ博士が既に準備万端整え窯に火をつけられたところでしたが、雨足の状態も気がかりでしたので、この機会に作業と炭焼きを本日は中止して本格的な炭焼窯を見学に行きましょうと提案しました。炭焼窯となればこの人を置いていくわけにもいかず、病み上がりの先代炭焼名人のMさんも呼び出し総勢5人で出かけることとなったのですが、事前に連絡をしていないことや時間の関係もあり検討した結果、彦根県事務所林業課の寺尾氏が多賀町高取で木質発電プロジェクトの炭焼窯を造っているのを思い出し決定。寺尾氏の知らぬ間に現場を訪れた我らは、そこはカマド職人(先代炭焼名人)や元セラミック関係者(キノコ博士)&炭焼名人です。カマド氏はメージャーとノートを手に素早く要所要所の数値を記録、セラミック氏は耐火煉瓦の品番や耐火モルタルの品名、名人は隣の昔ながらの炭焼窯の木酢液採取方法の観察という具合で、私とD氏は呆気にとられて見ておりました。寺尾様他、お留守の間に申し訳ありませんでした。紙面を借りてお詫びとお礼を申し上げます。なお、炭焼窯の建設は来年度になりますので、これからも検討と視察をする予定です。雨のために中止したこの日の作業ですが、翌日、炭焼名人&キノコ博士は林内に寝かしていたほだ木を立てるなどの手入れをされていたようです。ご苦労様でした。その甲斐あってか、ようやくシイタケやヒラタケが発生してきました。

右からイカタケの成長 三様

 11日の作業日は、前日に各紙をにぎわしたイカタケの観察会から始まりました。このキノコ、タケとの格闘やケヤキの実生苗を育てている南西の場所を貫く観察路のタケチップの中から発生しているのが見つかったのです。熱帯地方のキノコで今回の発見はおそらく日本の北限情報になるだろうとのことです。12日の催しでキノコ観察の指導をお願いした専門家の横山明子さんは、「多分、菌糸は県内の他の地域にもあるのでしょうが、こうしてキノコの発生までには条件が整わず、至らないのでしょう。」とおっっしゃていました。この件につきましては、9月のハイハマボックスに続く自然系の話題と言うことと、テレビで関西地方全域に流れたために関心を呼び、時節柄、当方に「神の手」の嫌疑をかける者まで出る始末です。(余談) 作業の中心は、ハチクの間引きだったのですが、なかなか難しいものです。伐ることではなく、適正な本数を間引くということがです。多くの人で活動するので、どうしても全体のバランスが執れずに過剰な収奪になるようです。しかし、竹林の場合はそれでも良いのではと考えています。来年のタケノコの発生時期に少し残すタケノコを増やせば元に戻るのですから。12月の作業でも取り組む予定です。伐ると同時に切り株をナタで割るようにお願いしていましたが、手違いからナタが作業をする人に渡らずに雨水が貯まる状態になっているの物が多く、このままではヤブ蚊の大発生源になりそうです。次回には割る作業を別に追加します。今年は竹林整備で雨水を蓄えた切り株が増えた分、昨年よりヤブ蚊が増えているように感じています。

★作業の達人

樹上のW氏

 毎月の作業の中には経験を要する危険なものもありますが、私の上司に当たる部長が作業に参加して感心したのは、W氏の熟練の技。よほど印象が強かったと見え、職場の朝礼で、氏の技術のすばらしさとこのような人も参加する活動の奥の深さを語っていました。もっとも、毎度、草刈機持参で参加する我が部長も草刈名人の称号をあげても良いかとも思っていますが。(ヨイショ) 森女史は草原広場の草どもを、草刈名人の除草の前に調査しなければ刈られると大慌てだったのですが、名人はご存じないことでしょう。話が横道にそれましたが、W氏のすごさは、熟練の技術と持参の道具、そして人柄にあります。いつものオーチ君は枯れ木の大木を倒す必要が出てくると親子以上に歳が離れているのですが、「Wさんに相談しょ、あの人はすごいわ!」と頼るのが常です。10月のモミジの森での作業では、アラカシをそのまま倒すとモミジの枝を傷付けるので私が(倒すアラカシの)枝を払いますと、持参の木登り道具を使ってするすると登り樹上でチェンソーを使うという案配でした。11月の作業では墓石に損害を与えないように枯れ木を決められた方向へ確実に倒す作業をお願いしました。ややこしい作業が出てくるとあれもこれもとすっかり頼りきっています。先月号でお知らせしていたサクラの救出作戦も、11月の作業日に日照を遮っていたコナラ、アベマキ各1本とアベマキの大きな枝を見事な技で処分して下さいました。我々は下から見事な技を見上げているのみです。
 その近くの場所では、枯れて倒れている杉をチェンソーで挽く名人もいました。腐りの来ている部分を避けてテーブル状に挽かれたこの杉を、次回の作業では人海戦術で運び出しましょう。様々な名人の技に感謝。


★遊林会は林床管理作業が基本

 12日にいつもの活動に続いて別の行事をしたのですが、なぜ11日にしてしまわないかと疑問を持たれた人はないでしょうか。それは、第2土曜日は作業日でありイベントで代えることはできない、遊林会の原点は作業にあるとのこだわりからなのです。森を生き返らせるためには作業が欠かせない、啓発活動や頭脳集団だけができても森は甦らないとの信念からです。作業回数を増やすことを考えても、減らすことは考えたこともありません。来年度は、世界湖沼会議や21世紀のスタート、ネイチャーセンターの完成の年として、前号でも書いていましたがコンサートや自然体験教室、里山に関するあらゆる分野の方々の講演など様々なことを計画しています。しかし、毎月の作業を忘れては遊林会はないのだという思いで進めていくつもりです。「難しいことはわからん(かつて私の口癖でしたが)、わしは体を動かして森と話をしていたい。」という人がいつまでも中心で活動を盛り上げて行くのが遊林会なのです。遊林会は頭だけを肥大させない! 作業が遊林会活動の基本です。組織が大きくなれば、いずれ意見の相違も生じるでしょうが、人の手によって創り出された自然には人の手による管理作業が必要だということを基本にすれば、無駄な議論は少なくなるのではないかと思っています。もちろん、作業場所はこの森に限らないことはいうまでもありません。

★「河辺いきものの森」情報

 建築工事の施工管理を担当しているのが3人目の髭親父、カワイ君です。前号でお知らせしていますようにアキレス腱を切断しましたが、入院することもなく職場復帰を翌日には果たし、施工管理に従事しています。さすがに遊林会の活動まではと声をかけていなかったのですが、作業日には森に現れ、火の前に座り込んで焼き鳥屋をやってくれてました。脱帽! しかし、県立大学の柴田ゼミから預かった学生がネイチャーセンターの建設目的を質問した際に「そらー、こうしてみんなで集まって酒を飲むためやないかー。」との返答をし、それまでの質問に対する答えのすべてについて信憑性を問題にされてしまったようですが。
 作業小屋の鉄骨が建ち上がり、我らの活動の拠点が姿を現し始めました。できあがれば、随分、毎月の活動が楽になるでしょう。この建物の完成はもうすぐです。ネイチャーセンターの完成は4月頃でしょうが、展示関係は来年度になりますので全面オープンは14年度のことになります。しかし、事務局の移転や催し物の実施などできたところから利用する計画です。来年の今頃はガラス窓越しに薪ストーブの火にあたりながら木々の黄葉を楽しむこともできるでしょう。決して、ストーブでスルメを焼いたりはなさらないようにお願いします。そんな方は作業小屋のストーブをご利用下さいますように!

★晩秋の森、散策のお勧め

 遊林会のキノコ博士、Z氏は普段も林内のあちこちを数日おきに歩いてキノコを観察中で、先日は、六甲で中毒事件が発生した猛毒のドクツルタケも発見されてました。皆様も作業日以外にも、深まり行く森の秋を様々に楽しまれては。林冠トレールからの黄葉は見事ですよ。

★ラッカム博士の講演会 1月20日(土)

 森林総合研究所の招きでイギリスから、森林の権威で森の歴史や管理に詳しいラッカム博士が来日されます。イギリスでのボランティアによる森林管理についても詳しい方だそうですので、精華大学の小椋教授を通じて講演をお願いしています。まだ本人への最終確認はできていませんが、森林総合研究所の了解も得ており間違いないでしょう。国内を飛び越えていきなりイギリスの話ですが、まさにシンクグローバル、アクトローカルです。詳細は、次号でお知らせしますが、1月20日(土)、八日市市立図書館 集会室で午後から開催の予定をしています。
 語学教育助手として日本に来ているイギリス人のリンが遊林会活動に参加していますが、彼女はイギリスでしていた活動を日本でもできないかと調べて参加しているようにイギリスではこうした活動の歴史があります。ラッカム博士には、イギリスのこうした活動をスライドなどを使用してお話いただけるようにお願いしておりますので、内容のあるわかりやすい講演会になるものと確信しています。

★イベント報告

 12日の河と山を考える催しは、東近江環境保全ネットワークの事業として、子育てサークル「チャオ」と共同で実施しましたが、当日は親子連れや自分達だけで森にやって来た子供達で賑わいました。遊林会のメンバーやチャオの皆さんによって、木片を使ったクラフトやタケトンボ作りの指導、焼き芋、ソメヤンハサケガースキー氏のイモ煮、隅っこでこっそりサクラチップ使用のK氏の燻製、キノコと森の観察会と様々な取り組みがされました。300人ほどの参加だったでしょうか。この森ではあまり多すぎても森の許容量を超えてしまいマイナスの面が出てきますから、これくらいがちょうど良いのかも知れません。気の毒だったのは、広場にベンチがなくみんな立ちっぱなしだったことで、早く広場にベンチを置ければと思っています。応援してくださった方々、ありがとうございました。

★忘年会の提案と飲酒運転防止

 昨年は森の中で忘年会をしました。今年もいかがでしょうか? 午前中は落ち葉掻きや竹の始末をして、お昼前から昨年のようにおでんを囲んで一年間の活動を振り返りましょう。雨天決行です。雨の場合は草原広場のケヤキを支柱にして大きなバロンシートを張って屋根を作りましょう。会費500円(カンパ、募金箱に入れてネ)、飲み放題、食べ放題、帰りは八日市駅まで路線バスに乗るというのはいかがでしょうか。歩いても30分です。飲酒運転防止対策をして参加して下さい。
 なお、この日は琵琶湖バレイ自然塾で同様の活動をされている皆さんも参加されます。湖国、淀川上流の森と水は我らが守る仲間として交流しましょう。(言うことがでっかいなぁ!)

★水鳥観察会のお知らせ

 布施公園での水鳥観察会を、3月まで毎月第4土曜日、午後1時から実施します。毎回、確実に9〜10種類のカモを観察できます。今までに確認しているのは12種類です。防寒対策を充分にしてご参加下さい。双眼鏡やフィールドスコープは主催者が用意しています。


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