’00年9月号 No.28
7月第4水曜日の活動日には、人数が少なければ南高緑地デザイン科の森をテーマにした今年のコンクール参加作品(昨年は全国大会1位)を鑑賞しようかとも考えていたのですが、嬉しいことに参加者が多く作業をすることになりました。第2土曜日の12日、真夏・盆前と悪条件でしたが参加者30人とその割に好調でした。昨年は15人で県立大の野間氏と私を除けばベテランばかりでしたが、今年は若者(?)が多く平均年齢が随分下がりました。参加者の中には、後でふれる湖沼会議市民ネットの堤さんと進さん(年齢不詳の男女!)の姿もあり、休憩時間はいつも以上に賑やかで、午前中のみの日程が、打ち切りの声をかけなかったら延々と続きそうでした。作業解散後、二次会を設定した面々もあり、三次会解散は午後7時だったとか。くれぐれも飲酒運転には注意されますように。
ここのところいずれの作業日も、タケ退治が主な作業でしたが、いつまで続くのかタケとの戦いという感じです。9月の作業からは、常緑樹の択抜や薪作り、ササ退治(あんまり変わらんなぁ!)も加えてバリエーションのある内容にする予定です。
食草を手に説明8/10 |
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8月10日に市立図書館に元八日市市教育長で蝶研究家の森石雄氏を迎えて、講演会「チョウと植物」を開催しました。秦荘町の自宅から旧制八日市中学への通学途上に八千代橋付近の河辺林で蝶の観察をしていたという経歴の持ち主ですから、あの森を60年以上に渡って観察されていることになります。蝶研究家は、蝶ごとに異なる食草の熱心な観察者にならなければ蝶の採取ができないために、視点は異なるけれども必然的に植物研究家でもあり、蝶の採取の要領は「蝶を見ずに食草を見て蝶を待つ」というのが氏の持論です。氏の話を聞けば、八日市の蝶の変遷を通じて市内の植生の変化も理解できます。オオウラギンヒョウモン(大裏銀豹紋)という蝶は食草(スミレ)がたくさんある草原性の蝶で、戦後の飛行場跡に広がった広大な草原(沖野原)に乱舞しており、聖徳中学校の教諭時代、休み時間に校庭で県内の理科教師の実習に必要な数十頭を採取したそうです。沖野原の草原が開拓、工場誘致、宅地開発で姿を消すと共に、この蝶は1年に1頭でも採取できれば幸運という状況になりました。草原の消滅が特定の蝶の消滅に結びつく、同じことは森でも言えます。現在作業をしている森は、氏にとってはキマダラルリツバメの生態解明、関西では珍種であったウラジロミドリシジミの採取、蛾の仲間であるシタバ類の日本生息種の半数を採取したことなど、数々の輝かしい軌跡を与えてくれたフィールドでした。早朝、八日市駅から捕虫網を手に河辺林を目指す一群の姿が、野良仕事の準備をする村人に別世界の人々と映ったのもこのころの話です。その後、荒廃して特定
オオムラサキ:再び河辺林を飛翔する日は |
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の常緑樹のみが繁茂した森に蝶を求めても歩くことも姿を見かけることもできなかったそうです。私は、植物の種の減少が蝶の減少をもたらすことを3年前の河辺林シンポジウムでパネリストをお願いした氏から学びました。
八日市に関係のある蝶を、この日のために再整理した標本箱を手にその種にまつわる数々のエピソードを伺う一時は興味の尽きない時間でした。講演の後、河辺の森を捕虫網を携えた氏と共に歩きましたが、氏から驚きの声があがりました。蝶の観察にとっては決して良い季節ではないのですが、それでもいるのです。シタバ類も14種の内5〜6種が見つかりましたし、蝶ではシジミチョウ、アゲハチョウ、タテハチョウの仲間が見つかり、今回の整備の結果だろうと林床整備についてまずは合格点をいただけたようです。これからますます増えるだろうから、少し本腰を入れておろそかにしていた近辺の蝶の観察やネイチャーセンターを意識して標本作りをしよう、また、オオムラサキがたゆたゆと飛翔する姿を是非この森で再び見たいともおっしゃっていました。
炭焼き名人の城さんは、「専門家の話を聞き一緒に歩くことは目から鱗ですわ。今まで見えなかった蝶が見えるようになりましたわ。黒くて紋のない大きなのがいたら、この辺ではまだ見つかっていないナガサキアゲハですよ。」と12日の作業ではみんなに注意を喚起されてました。これからも折々にこの森をテーマに、秋には虫の音を聞くようないろんなジャンルの観察会を開きたいと考えています。意外な驚きがありますよ。
遊林会では7月から事務局体制を充実させています。指導員 森小夜子、指導助手 松本勘一郎、事務 岸紗綾、監事(経理責任者)疋出善嗣の皆さんです。監事以外は、任期は6ヶ月間で12月までです。監事は、市の収入役に当たる立場で、毎月の経理をチェック(収入、支出を審査後、監事名義口座で処理)してもらっています。松本さんは、現場事務所で案内や森のパトロール、観察路補修などを積極的にこなされています。河辺の森で自転車に乗って観察路をパトロールする人を見かけたら松本さんです。(一般利用者の自転車乗り入れは、植生が痛められるので禁止しています。森の中は、管理作業用車両を除けば徒歩と車椅子だけの世界です。) 森、岸の両名は、観察会の実施や植生調査、標本作成、湖沼会議へ向けての行動計画策定などが担当業務です。
河辺いきものの森は、ただいま視察ラッシュです。8月だけでも1日の龍谷大学社会学部の学内研究プロジェクトチーム(広大なキャンパス内の雑木林の活用を計画中とのこと)、11日の県議会琵琶湖環境特別委員会の議員の方々をはじめとして、県の農政サイドの食と農と環境を考える県民会議、安土町、大津市伊香立、近江町のまちづくり関係の皆様といった状況です。整備途中で施設らしい施設があるわけでもないのですが、里山保全に関心のある方々がお出でになります。活動の広がりを大事にしている推進室では、可能な限り受け入れと支援をしたいと考えていますが、カンカン照りの8月の太陽の下で視察者の意図を越えた説明者の熱意が持て余されているのではと時には感じることもあるのですが。→「あんなとこ行ってもなんにもないで。暑いだけや。ヤブ蚊もおるし、おまけに歩かされるし・・・・。ボランティアは、あの中で作業までしょるらしいで。」そんな声が聞こえそうです。もう少しお待ち下さい。休憩所も冷たい飲み物も用意しますので。でも、せめて1キロ程度は常に歩いていただこうと考えてますので、「あそこはきついで」と悪い噂が立って視察者がなくなるかも知れませんが。
森林観察デッキだけが紹介されたりして遠くからそれだけを見学に来られる方が絶えません。森を知る道具であるデッキがそこから見える自然を開設する説明板がないために、道具としての価値だけ鑑賞の対象にされてしまうような気がしてやきもきしています。本格的な説明板の設置は来年度の事業ですが、こんな状態を見過ごせないと推進室では協議をして、手作りの標識を取り敢えず設置しようと決めました。そうなると問題児の山本君の出番です。例によって本来の職務をそっちのけにしてかかりました。お披露目中です。
只今、オーチ係長殿はネイチャーセンター起工式の雑用で追われています。9月始めにいよいよ着工、年度内にほぼ完成することになります。
緊急雇用創出事業による事務局スタッフの雇用は、来年11月に滋賀県で開催される世界湖沼会議への参加を射程に入れてのことです。湖沼会議と遊林会? どこに関連があるの? そんな気がすると思いますが、あの森の少し東で湧きだした水(パトロールの松本さんの森)が、懸口井(カケグチノユ)と呼ばれる流れとなってかつて河辺の森を潤し、いつも話しますが、夏には懸口井にアユが琵琶湖から遡上し、いじこ(わらで編んだ両側に取っての付いた穀物などを入れる大きな入れ物)でつかんだとか、鍋に一杯つかんだとか、年寄りは誰でも楽しそうに昔話を語ります。アユは琵琶湖からの使者です。鈴鹿山脈に降った雨は山を潤し伏流水となって地中を流れ、中流域の河辺林に湧き出していたのです。今度の湖沼会議では、琵琶湖に注ぐ河川や上流の水源涵養林等にも視点を広げるように聞いていますし、市民サイドからの呼びかけや参加も計画されているようです。琵琶湖に注ぐ愛知川に接し、湧き出た伏流水が森を豊かにして琵琶湖に注ぐ、この森も琵琶湖のあり方に深く関わっていると言って差し支えないでしょう。遊林会が湖沼会議に何ができるか、現在、検討中です。来年の11月、この森の活動を通して世界の湖沼を世界の人と共に見ましょう。
今年度中に総会を開催して、みんなで各種の取り決めをしたいと考えています。何をするのか、会則、賛助会員制度、会費、役員選出などについての相談です。年度内に完成する作業小屋で開くのも一考かな。今後、たたき台を作る作業に入ります。これだけは言っておきたいということがあれば、事務局までどうぞ。
21世紀 世界リードの 憲法を
変える愚かな 日本の逆流 (うたの落書 187号より)
杞憂に過ぎねば良いのだけれど、20世紀を隅から隅まで生きた人の言葉は重い。(初めての人に:黒瀬翁は市内3番目の長老で活動支援者、心は参加者)
活動紹介ビデオを図書館2階の風倒木にお願いして希望される方に鑑賞していただけるようにしています。友だちを誘って、好きな地元作家のコーヒーカップでコーヒー(一杯\100なんです!)を飲みながら鑑賞されてはいかがでしょうか。図書館は、月・火が休館です。
陶芸家村松氏の挑戦的な提案、タケを使ってぐい飲みを焼く話、誰も申し出がありません。このままでは企画倒れです。(やれやれ、徹夜作業から逃れられるわい。) やろうという人は事務局まで連絡して下さい。
9月の食事が気になっています。あの敗戦後の時代を偲んですいとん、タケの次に強敵となるクズをこれも天ぷらで食べて成敗しようかなんてことを考えています。材料の差し入れ、大歓迎です。