’00年5月号 No.24
3月の作業では、マンサク(まず咲くの意)のないこの森ではヤブツバキの花しか見あたりませんでしたが、4月にはシュンランやタチツボスミレの花に出会うことができます。これからは、フジ、シャガ、ウワミズザクラ、ヤマツツジ、モチツツジ等の花が次々と咲きます。高いところに地味な花を咲かせ人目に付きにくい、コナラやアベマキ、クヌギ、ナラガシワ等のナラ科、ムクノキやエノキ、ケヤキのニレ科の花もこれからです。また、明るくなって歩きやすくなった林床では、今まで細々と生き残っていて人目に付かなかったり、充分に育つことのできなかった植物の花がこれからも見つかることでしょう。
今年度から建設に着手するネイチャーセンターでは、資料としてこれらの花の写真を収蔵する計画です。利用者にその時々のこの森の花を案内をできればと考えています。現在、特にその存在を確認したい植物は、コバノミツバ(小葉の三葉)ツツジとササユリです。
4月作業日は、初めて本格的な雨となり作業を中止しました。しかし、観察路や森林観察デッキも完成して森の様子もすっかり変わり、新芽や春植物を観察するのに良い状況でしたので、秘かに自然観察会の心づもりをして現地に出掛けました。駐車場で待っていると6人ほどが見えたのです! 昨年の雪の時もそうでしたが、こんな気持ちに支えられているのが、遊林会の活動だと改めて感じました。雨の中、できあがったばかりの森を周遊する小径に春を求めて繰り出しましたが、昔を知っている者にはこの森を傘を差して歩けるということだけで感慨深いものがありました。いたる所に芽を出しているヤブカンゾウ、咲き誇るシュンラン、一足早く新緑状態にあるイロハモミジの森、キツツキの開けた穴のある倒木、野菜の種まき状態で発芽したケヤキの実生、最後はできあがったばかりの森林観察デッキからのふくらみ始めたクヌギやコナラの新芽の観察と1周1時間半の周遊コースを歩きました。
雑見:陽の光が届くようになって芽を出したケヤキの実生は恐ろしい数で、今今まで薄暗い林床で出番を待っていっせいに活動を始めたような状態です。多分、洪水によって表土がかき回された昔の森でもこのようことが発生し、ケヤキの森が作られたのではないでしょうか。そう思って見回すとケヤキの大きさがみんな同じような気がしてくるのです。
現在は雨のために中止をせざるを得ない作業ですが、作業小屋が完成すれば、屋内での作業やこれから作業計画を相談することができ、雨の日は雨の日なりにすることがあり、今回のように中止する必要がありません。ソメヤンハサケガスキー氏は、前夜アルコールで朦朧とした意識の中でタケノコの下ごしらえと豚汁の材料、定点の自然観察に通い続けてキツネの道に平行して踏み分け道を作ってしまった森の小径さんは天ぷら材料のタチツボスミレとアケビの花、私はよその森で採集したヤブカンゾウの後始末に苦労してしまいました。作業小屋の早期完成が待たれます。
作業小屋は、コンクリート土間、簡単な流しと倉庫のある100u弱の建物で、薪ストーブで暖を採ります。おくどさんは屋根だけの別棟になります。その時には、皆さん、雨の日は節度を持って楽しむようにして下さい?! もう少しすると全天候型の活動になります。
一部では建設に反対意見もあった森林観察デッキが完成しました。樹脂加工をした国産檜材の階段や手すりは白木の感じで、木々の緑に良く調和しています。天国に続くような階段を、落葉樹を下から追いかけているアラカシやネズミモチの樹冠を越えて登り、アラカシの梢が下に見えるようになると高さ12mの最上部です。そこから眺めると一面の落葉樹の冬枯れの梢ばかりで、愛知川も鈴鹿の山々、建部北町の集落も見えません。一カ所だけ冬枯れの梢を越えて緑が見えますが、湿潤な土地に植えられた生き残ったスギたちで、さすがに植林される樹種だけあって新参者であるにもかかわらずコナラやクヌギを抜き去っています。階段の登り口は一年を通じて木々は緑色ですが、デッキの上から眺める森は、冬枯れ、萌える梢とさわやかな新緑、夏の盛りの一面の緑、黄葉で覆われた晩秋と季節の移ろいを見せてくれることでしょう。感傷的に落葉樹が美しい景観を作り出してくれるから落葉樹でなければいけない
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のという訳ではありません。生命豊かな里山は、副次的にメリハリの利いた美しい季節の移ろいを感じさせてくれるということと、現在では高さ10m以上の部分に時間の缶詰のように残されているということです。森林観察デッキは、本体そのものだけが完成した状態で、季節の移ろいの写真や森林の階層構造の解説板がなければたいていの人には単なる物見の塔になりかねません。デッキはできあがりましたが、ソフト面でのフォローが急がれます。しかし、難しいことを抜きにして天気の良い日に森の樹冠を眺めるのは楽しいことではあります。次回の作業日には、是非、体験してみて下さい。
先日、G8環境大臣会議で地球の温暖化を防ぐために二酸化炭素の排出量を減らすことなどが話し合われましたが、それに平行していわばNGO(非政府組織)版の会議とも言うべきシンポジウムが愛東町で開催されました。風力発電を試みている人、木質発電の計画者、太陽電池発電所を出資者を募って増やそうとしている人、菜の花でバイオディーゼルオイルのご当地愛東町に混じって遊林会もパネリストとしてお呼びいただきました。エネルギー面から見た場合、私たちの活動は、つくづく昔の炭坑の坑道やボタ山の後始末をしているような活動なのだということに気がつきました。再生可能なエネルギー資源であった里山の回復を試みている活動であり、ささやかですが、穴窯の燃料としてガスや石油、電気の利用を抑制することにも関わっています。しかし、私たちの活動はこうした環境の面以外にも多くの価値があります。3月の国土庁の「語ろう、里山のこと」シンポでは、里山保全活動は生き甲斐や健康保健対策の面からも重要であるとの発言がありましたが、私たちもその通りだと考えています。いろいろ効用はありますが、堅く考えずに遊林会活動を楽しむことを持続しましょう。
追記:アースディでは環境自治体会議の須田春海氏から、地球温暖化を防ぐにはエネルギー利用の技術革新があるので1980年程度の生活レベルに落とせば可能だとの意見が照会されました。少しみんなで我慢をすれば・・・・。大事にしたい意見です。
12年度を迎えて、あの森林観察デッキ、駐車場、屋外トイレ、観察路、森林の少し荒っぽい整備といった初年度の事業が終わり、観察デッキののところでも触れましたがそれぞれの結果を目にすることができますが、新しい悩みも発生しています。
竹が進出していた部分で抜根や全面的な伐倒を実施しましたが、結果として裸地が誕生しました。先に、ケヤキの実生のことに触れましたが、裸地になったところには何が生えてくるか期待と共に不安でもあります。一部の場所では、南高生が人海戦術で森のコナラなどの実生を刈払機対策用の竹のバリヤーで囲って移植しています。その他の所では? 心配しているのは、砂利採取の行われた水辺の森予定地に埋め戻しの土と共に侵入したセイタカアワダチソウと林縁にあったクズの生息域の拡大です。中でもケヤキを中心とした南西部分の森で、クズが日照条件が良くなり林床を這って侵入するのではという心配です。屋外トイレのある草原広場では、昨年の炭焼きをしている場所の横(林の中で直接、直射日光が林床に届いている)の例から推察するに埋土種子由来のタラノキ、コウゾ、ヨウシュヤマゴボウなどが芽を出しそうです。それにいずれの場所でもお引き取りを願ったタケノコも生き残った根から発生しそうです。今年の夏は、ササの処理と併せてこれらの植物への対応も重要な課題です。柄の長い長刀(ナギナタ)もどきの鎌や刈払機の操作が必要になりますが、これらの道具や機械は事故の原因になりやすく充分な注意が必要です。
遊林会の活動と資金のことについて少し触れます。活動に必要な機械や道具の購入、トンボ池を作るなどの費用については、趣旨を説明して申請手続きをすれば支援していただける財団等が現在では数多くあります。薪割機等の購入(今年度は交流活動に対する支援も)は国土緑化推進機構から補助金を受けていますし、道具の購入は今年度まで林野庁と市の支援を受けています。いつまでも他人頼みが良いとは思いませんが、緑の質とボリューム、自然を守る活動には、活動団体の質さえ維持できればこれからも支援を受けることはそう難しくない状況にあります。活動の潤滑油である賄いや通信等の費用については、このような経費は当然のこととして自前で調達しなければなりませんが、幸いに遊林会では痒いところに手の届くこのような支援もロータリークラブやJC、ソロプチミスト、そして市民の皆さんから受けております。それ以外には、講演謝礼が大きなウェイトを占めています。お陰様でどこから費用が出ているのだろうと心配されているちょっと苦い清涼飲料水の購入費用も、現在は資金手当てができているのですが、より安定した財源確保のためには小口の多くの支援を受け入れ易くする方法を確立する必要があります。・・・続きは次号で。
ハチクのタケノコを探し出してタケノコづくしの昼食を予定しています。タケノコご飯、煮物、汁物、田楽、発生していない時は・・・・・。
自分で使う食器を持参していただけると助かります。